SUPER GT

【2022シーズン総集編】後半戦に追い上げたSTANLEY NSX-GTがランキング3位を獲得

2021年シーズン、惜しくも2年連続のシリーズチャンピオンを逃したHonda陣営は、2022年シーズンに向けて「より強いNSX」を目指し、ベース車両をタイプSへ切り替えた新型車を開発した。

【2022シーズン総集編】後半戦に追い上げたSTANLEY NSX-GTがランキング3位を獲得

苦手コースが続く中でポイントを重ねた前半戦

2021年後半に投入された2基目のエンジンは、燃焼室を改良してパワーアップを図った仕様で、狙い通りのパフォーマンスを発揮していた。しかし、2021年シーズン終了後に開発陣がその2基目のエンジンを改めて検証したところ、信頼性を保証できない箇所を確認。そのため2022年シーズン前半に投入した1基目のエンジンは、2021年後半仕様のエンジンよりもわずかにパワーを抑制し、そのぶん信頼性を高めた仕様で挑むこととなった。

また、今季は年間のレースカレンダーが見直されたことで、シーズン前半に高速コースでのレースが続き、NSX-GTにとっては厳しいレース展開が予想されていた。そのためHonda陣営は、NSX-GTと相性のいいテクニカルコースが続くシーズン後半に巻き返す戦略をとった。

NSX-GT勢は、レース中盤に発生したアクシデントによりレースが途中打ち切りとなったシリーズ第2戦(富士スピードウェイ)で8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)が優勝を果たしたが、シーズン前半はこの1勝のみ。100号車 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)はトップから8点差の23点でランキング5位、8号車 NSX-GT(野尻/福住)がトップから10点差のランキング7位につけてシーズンを折り返した。


Astemo NSX-GT/第5戦鈴鹿サーキット
Astemo NSX-GT/第5戦鈴鹿サーキット

Astemo NSX-GTがタイトル戦線へ浮上

シーズン後半戦は8月28日、鈴鹿サーキットで始まった。通常のレースより1.5倍長い走行距離450kmで争われたこのレースでは、17号車 Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治)が中盤から首位を走るも、給油時のトラブルで燃料が不足。完走するためにペースダウンを余儀なくされ、フィニッシュ直前に12号車カルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)の逆転を許し、2位でレースを終えた。17号車 NSX-GT(塚越/松下)は優勝こそできなかったが、大幅にポイントを稼ぐことに成功しランキング4番手に浮上した。


Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(笹原右京、大湯都史樹) / 第6戦スポーツランドSUGO
Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(笹原右京、大湯都史樹) / 第6戦スポーツランドSUGO

期待の2基目投入もSUGOの雨に翻ろう

シリーズ第6戦の舞台は、これまでNSX-GTが得意としてきたスポーツランドSUGO。Honda陣営はシーズン後半戦の巻き返しに向け、このレースから2基目のエンジンを投入した。しかし、レースウイークは台風14号の影響でNSX-GTにとって裏目の流れとなってしまう。

レースではNSX-GT勢最上位の予選4番手からスタートした100号車NSX-GT(山本/牧野)が順調に2番手に進出したが、序盤のうちに雨が降り始め、その後には止んでコースが乾くなどコンディションが目まぐるしく変化。そうした状況のなか、タイヤ交換のタイミングが絶妙だった16号車 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(笹原右京/大湯都史樹)が3位でフィニッシュを果たし、大湯にとっては自身初の表彰台に登壇。その一方で、100号車 NSX-GT(山本/牧野)は8位へ後退。ランキング上位の17号車 NSX-GT(塚越/松下)、8号車 NSX-GT(野尻/福住)はポイントを獲得できずにレースを終えた。


Astemo NSX-GT/第7戦オートポリス
Astemo NSX-GT/第7戦オートポリス

クラッシュを乗り越えての劇的勝利

オートポリスで開催されたシリーズ第7戦は波乱の展開となった。公式予選前に行われたプラクティスにおいて、それまで好調だった17号車 NSX-GT(松下)がコースオフを喫し、マシンにダメージを負ってしまったのだ。

公式予選では100号車 NSX-GT(山本/牧野)が2番手、フロントローを獲得。チームが急きょマシンを修復した17号車 NSX-GT(塚越/松下)は、カラーリングも間に合わない状態のボディで公式予選に臨んだが、周囲の心配をよそに快走を見せて4番手に続いた。

快晴となった決勝レースでは、ドライバー交代のピット作業で100号車 NSX-GT(山本/牧野)が首位を奪取。前日のクラッシュの影響が心配された17号車 NSX-GT(塚越/松下)も快調に順位を上げ、100号車 NSX-GT(山本/牧野)の次の周でピットに入ると、ピット作業のロスタイムを短縮して100号車 NSX-GT(山本/牧野)の前に出ることに成功。2台はそのままの順位をキープし、Honda勢今季初の1-2フィニッシュを遂げた。


STANLEY NSX-GT(牧野任祐、小島一浩監督、山本尚貴)/第8戦モビリティリゾートもてぎ
STANLEY NSX-GT(牧野任祐、小島一浩監督、山本尚貴)/第8戦モビリティリゾートもてぎ

ホームもてぎでポール・トゥ・ウイン

シリーズも大詰めとなった最終戦は、モビリティリゾートもてぎで開催された。全車サクセスウエイトを下ろしたガチンコ状態で迎えるこの一戦で、シリーズチャンピオンが決する。NSX-GT勢では、17号車 NSX-GT(塚越/松下)がトップと4点差のランキング3番手、100号車 NSX-GT(山本/牧野)が17点差の4番手につけてシリーズチャンピオンの可能性を残していた。

予選では100号車 NSX-GT(山本/牧野)が狙い通りポールポジションを獲得したが、17号車 NSX-GT(塚越/松下)のペースは上がらず予選10番手に終わるという対照的な滑り出しに。決勝レースはセーフティカーが導入される荒れた展開となったが、100号車 NSX-GT(山本/牧野)は燃費を考えながら後続車との間隔をコントロールしてポール・トゥ・ウインを達成。最終戦を勝利で飾ったものの、2位に入賞した12号車 Z(平峰/バゲット)がシリーズチャンピオンを獲得し、NSX-GTの王座獲得とはならず。NSX-GT勢では最終戦で優勝した100号車 NSX-GT(山本/牧野)がHonda陣営内で最上位のランキング3位、17号車 NSX-GT(塚越/松下)が4位で2022年シーズンを終えた。


Masahiro Saiki
Masahiro Saiki
HRC SGT Large Project Leader
開幕前のレーススケジュールを見たときから、シーズン前半が苦しくなるのは覚悟していました。しかし、その前半戦のほとんどのレースでポイントを重ねられ、シーズン中盤まではいい流れでした。ところが、雨になったシリーズ第6戦のスポーツランドSUGOで、ポイントを獲らなければならないクルマがポイントを獲れなかったところで流れが変わり、最終戦が苦しい状況になってしまいました。来年に向けてはウエットタイヤも含めて開発を進め、NSX-GTを作り込んで備えますので、変わらぬ応援をよろしくお願いします


GT500 ポイントランキング

Pos. Num. Driver Machine Pts
1 12 平峰一貴/B.バゲット カルソニック IMPUL Z 70.5
2 3 千代勝正/高星明誠 CRAFTSPORTS MOTUL Z 66
3 100 山本尚貴/牧野任祐 STANLEY NSX-GT 62
4 17 塚越広大/松下信治 Astemo NSX-GT 60
5 14 大嶋和也/山下健太 ENEOS X PRIME GR Supra 49
6 37 S.フェネストラズ/宮田莉朋 KeePer TOM'S GR Supra 43
12 8 野尻智紀/福住仁嶺 ARTA NSX-GT 24
14 16 笹原右京/大湯都史樹 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT 16.5
15 64 伊沢拓也/大津弘樹 Modulo NSX-GT 4

GT300 ポイントランキング

Pos. Num. Driver Machine Pts
1 56 藤波清斗/J.P.デ・オリベイラ リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R 52
2 61 井口卓人/山内英輝 SUBARU BRZ R&D SPORT 49.5
3 10 大草りき TANAX GAINER GT-R 49
4 52 川合孝汰 埼玉トヨペットGB GR Supra GT 48
5 52 吉田広樹 埼玉トヨペットGB GR Supra GT 47
6 10 富田竜一郎 TANAX GAINER GT-R 45
8 18 小林崇志/太田格之進 UPGARAGE NSX GT3 34
12 55 武藤英紀/木村偉織 ARTA NSX GT3 26

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