IMSA(イムサ)は、アメリカのレースシリーズを開催する団体で、そのレースシリーズの通称ともなっています。 IMSAの中核をなすのが、世界三大耐久レースの一つ「デイトナ24時間レース」です。
IMSAとは?
自動車というマシンにとって、より速く走ることと同様に、より長い時間、全開走行で走り続けることは技術的に過酷なチャレンジと言えます。
IMSA(イムサ、International Motor Sports Association)は、多くのメーカーやチームが参戦するアメリカの重要なレースシリーズを開催する団体で、そのレースシリーズの通称ともなっています。
IMSAの中核をなすのが、米国フロリダのデイトナ・ビーチで毎年1月末に開催される「デイトナ24時間レース」です。欧州の耐久レース「ル・マン24時間」、「スパ・フランコルシャン24時間」と並び、世界三大耐久レースに数えられています。
■デイトナ24時間レースの歴史
デイトナ24時間レース、通称デイトナは1962年に3時間のレース形式で始まり、1966年からは24時間レースとなり、60年近い歴史を持った伝統あるレースです。1991年からは高級時計メーカーのROLEX(ロレックス)がタイトルスポンサーとなり、「ロレックス24時間レース」とも称されます。北米市場が欠かせないマーケットである日本車メーカーにとっても、デイトナは重要なレースであり、これまで多くの日本メーカーが参戦してきています。
70年代から80年代には、マツダの「サバンナRX-7」がGTUクラスで12年連続優勝するなど、23回ものクラス優勝をマツダはこのデイトナで遂げています。
92年には日産自動車が「R91CP」というグループCマシンで、日本人ドライバー主体のチームで総合優勝を達成しています。
さらに翌93年にはトヨタ「イーグルMKⅢ」が、94年には日産「300ZX」が総合優勝を遂げています。
■IMSAの概要
このデイトナ24時間を核として、アメリカで行われる一連のレースシリーズが通称IMSA、現在の正式名称は「IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権」となります。
IMSAのレースは、純粋にレースの為に開発されたプロトタイプ車による「GTP(グランド・ツーリング・プロトタイプ )クラス」と「LMP (ル・マン・プロトタイプ)2クラス」、そして市販車をベースにしたGT3車両が参加する「GTD(GTデイトナ)クラス」と「GTD Proクラス」によって構成されています。このため、レース車クラスと市販車クラスのスピードにはかなりの差が出ることになり、速い車が格下のクルマを抜き去る時には相応の技術が要求されます。場合によってはアクシデントに繋がることもあり、また同クラスの前走車を追い抜く機会にもなり、これが1クラスのみで編成されるフォーミュラレースとは異なる、耐久レースの見どころになっています。
IMSAは100年以上の歴史を誇るIndy500レースを中核にしたインディカー・シリーズや、NASCARカップ・シリーズと並ぶ、アメリカの主要レースシリーズの一つです。
■IMSAほか主要レースで活躍してきたHonda ARX
ARX-01
Hondaのパフォーマンスブランドである Acura(アキュラ)では、2007年よりV8 3.4L NAのモデルARX-01aでIMSAに参戦。ARXとはAcura Racing eXperimentalの頭文字で、先行の別モデルNew Sportscar eXperimental(NSX)になぞらえたものです。
ARX-01は01aから01gまで進化しながら、2009年と2010年にはLMP2クラスのマニュファクチャラータイトル(製造者部門)を獲得しました。
ARX-02
また、LMP2クラスと並行して、Honda Performance Development(HPD)が09年からLMP1クラスへ参入。HPDはHondaの北米レース会社である「HRC US」の前身となる会社で、ARX-02aをシャシー(車体)から開発しました。ARX-02aはシーズン8勝を挙げてマニュファクチャラータイトルを獲得しましたが、この1年でHPDのLMP1クラスへの参戦は終了しました。
ARX-03
HPD は2012年に向けて後続モデルARX-03を開発。LMP1クラス用のV8 NAのモデル03aと、LMP2クラス用のターボV6エンジンを搭載した03bがありました。同年、プライベーター(独立系)チームの米 Starworks MotorsportがARX-03bを使用しFIA世界耐久選手権(WEC)シリーズに参戦、ル・マン24時間レースのLMP2クラスで優勝しています。
ARX-05
2018年からは、デイトナ・プロトタイプ・インターナショナル(DPi)クラスに後続モデルARX-05で参戦を開始しました。DPiクラスの規定では、指定されたシャシーメーカー製の骨格を使用することが義務付けられており、ARX-05ではフランスのオレカ(Oreca)社のシャシーを基礎にし、Acura の量産車エンジンをベースにしたV6 3.5L ツインターボエンジンを搭載しました。
2019年、ARX-05はミッドオハイオ、デトロイト、そしてワトキンスグレンの各レースで優勝、全10レース中9レースで表彰台を飾り、マニュファクチャラータイトル、ドライバータイトル、チームタイトルの三冠に輝きました。
続く2020年も、増加された車体重量にも関わらず、ARX-05は再びタイトル三冠を獲得しました。
2021年にはついにデイトナ24時間レースでの優勝を勝ち取り、22年もこの世界三大耐久レースの一つで連続優勝を成し遂げました。
ARX-06
2023年にはDPi規定に代わり、新たにル・マン・デイトナ・h (LMDh)規定が導入され、これに則した新型ARX-06を開発。ARX-06の開発にあたっては VR(バーチャル・リアリティ)などのデジタル技術をフル活用し、チームやドライバーの意見を取り入れて開発しました。
例えば、24時間レースでは夜の暗闇の中も高速で走り続けるため、ヘッドライトの性能が重要になります。こうしたドライバーの意見を取り入れて先代のARX-05に対してヘッドライトのLEDの数を大幅に増やしつつ、 Acura 車のデザイナーが外観をデザインし、夜間性能と Acura のアイデンティティを両立しました。
パワーユニットは新規開発の2.4L V6ツインターボにハイブリッド機構を組み合わせたものです。
このARX-06は2023年1月のデビュー戦、デイトナ24時間でいきなりワンツー・フィニッシュ(1、2位独占)し、そのポテンシャルの高さを見せつけました。
2023年から始まったLMDh規定の車両は、WECのハイパーカークラスとの相互乗り入れが可能になり、現在ではIMSAのGTPクラスはAcura 、ポルシェ、キャディラック、BMW、そしてランボルギーニと、世界のパフォーマンスブランドがしのぎを削るクラスとして賑わいを見せています。