コンセプトからチャンピオンへ: Honda CR Electric PROTO
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コンセプトからチャンピオンへ: Honda CR Electric PROTO

Hondaのオフロード電動コンセプトバイクが画期的な活躍を見せた2024年FIM E-Xplorer World Cup。トーシャ・シャレイナはタイトルを獲得、フランチェスカ・ノチェラは準優勝を果たし、素晴らしい成績を収めました。

Hondaとレースは切っても切れない関係にあります。創業者の本田宗一郎が「レースがなければHondaはない」と語ったように、Hondaは常にモータースポーツと共に歩んできました。また、Hondaは技術革新においても、バイクや自動車、UNI-ONEを代表とするモビリティ製品などの分野で常に最前線に立ってきました。その中でも特に注目されるのが電動化です。

2024年、Hondaはオフロードレースと電動化の融合で大きな成功を収め、FIM E-Xplorer World Cupにファクトリーチームとして本格参戦。ライダーのトーシャ・シャレイナとフランチェスカ・ノチェラがCR Electric PROTOを駆り、その性能を存分に発揮しました。

Monster Energy Honda Teamのラリーライダーとしても活躍するシャレイナは、「チーム全体にとって全く新しい挑戦でした。私たちはこの選手権のパイオニアと言えるでしょう。電動バイクの全面的な開発の一年となりました。もちろん、まだ多くの課題がありますが、チームは100%の力を注いできました」と述べています。



その100%の努力は、シーズンを通してポイントと表彰台獲得という形で実を結びました。Hondaのお膝元である日本・大阪で開催されたシーズン初戦では、チームがトップの座を獲得し、この電動コンセプトバイクの実力を即座に証明しました。

チームは、ノルウェー・オスロで開催された第2戦でも表彰台を獲得。ノチェラが負傷を負いながらも、粘り強く戦い、転倒を乗り越えて準優勝を果たしました。「プラクティスではトップを走っていましたが、残念なことに予選で大きなクラッシュを起こしてしまい、レースを完走するのが本当に厳しい状況でした」とノチェラは振り返ります。実際、このコメントだけでは、彼女がレースに挑むために払った並々ならぬ努力を十分に表現できていません。

ノチェラは午前中に病院で検査を受けた後、午後のレースに復帰。優勝にはわずかに届かなかったものの、Team HRCにとって貴重なポイントを獲得しました。



スイスの最終戦は、順風満帆とはいかないレース展開となりましたが、チームはライダー部門とチーム部門の両選手権でタイトル獲得を目指し、激戦を繰り広げました。ノチェラはプラクティスで再び転倒する不運に見舞われ、本来の実力を発揮しきれず苦戦。それでも女性ライダー部門で2位を獲得。「素晴らしくも過酷なシーズンでしたが…後悔はありません」と語りました。

「人生で最高の経験でした!HRCファミリーのファクトリーライダーとして参戦できたことは素晴らしい経験でした。この上ない誇りであり、間違いなく私のキャリアの転換点となりました」とノチェラは付け加えました。



シャレイナも最終戦では苦戦を強いられました。第1レースでは、スタートでつまずいたものの、すぐに挽回。CR Electric PROTOの非常に高いポテンシャルを証明し、男性ライダー部門でチャンピオンを獲得。Team HRCのチーム部門準優勝にも大きく貢献しました。

「個人戦、チーム戦ともに、全戦を通じて安定して表彰台を獲得し、勝利を重ねることができました。最後のレースでフランチェスカが大きなクラッシュを喫してしまったのは残念ですが、これもレースの一部です。彼女が全力を尽くしてくれたことを誇りに思います」とシャレイナは述べています。

2024年はチームにとって開発の年となりましたが、収めた見事な成功は、まさにCR Electric PROTOに注ぎ込まれた努力の賜物と言えます。ノチェラとシャレイナの尽力により、今後さらなる進化が期待されています。

ところで、この電動プロトタイプの乗り味は、ノチェラのエンデューロバイクCRF250 4TやシャレイナのラリーバイクCRF450 Rallyとどれほど違うのでしょうか?「確かに違いは感じます。それは当然のことですが、このバイクは本当に乗りやすく、従来のエンジン音は聞こえませんが、それでも非常に楽しく走ることができます」とノチェラは語っています。



一方、シャレイナはより多くの違いを感じているようです。「パワーは非常に優れていて、スロットルやパワー配分、さらにはエンジンブレーキも自由に調整できます。重量は450とほぼ同じで、若干重いかもしれませんが、実際に乗ってしまえばその違いはほとんど感じません。」

「自分にとって最大の違いは、クラッチがないことです。バイクの動きを繊細に感じ取りながらコントロールしたいタイプのライダーなので、クラッチがないのは少し物足りなく感じます。ただ、この点については今後、新たな技術開発によって進化していくでしょう」というのがシャレイナの見解です。

Hondaは、FIM E-Xplorer World Cupに留まらず、他のカテゴリーでも開発中および実戦投入している電動バイクのテストに取り組んでいます。昨年、Repsol Honda Trial Teamのチームマネージャーであり、ライダーとしても豊富な経験を持つ藤波貴久選手が、電動トライアルバイク「RTL ELECTRIC」でMFJ全日本トライアル選手権シリーズの国際A級スーパー(IAS)クラスに参戦しました。

CR Electric PROTOの今シーズンの活躍は、Hondaが進める電動化への取り組みの一部に過ぎません。詳しくは、こちら をご覧ください。.