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ダカールラリーをもっと楽しむための豆知識 ルール編

ダカールラリーをもっと楽しむための豆知識 ルール編

どのような団体がダカールラリーを主催しているのですか?

アモリー・スポーツ・オーガニゼイション(Amaury Sport Organisation)、通称A.S.O.(エイ・エス・オー)というフランスの団体が主催しています。

実際には、A.S.O.と開催国のオートモービル・モーターサイクル・フェデレーションが協調して開催しています。A.S.O.は、ダカールラリーの他、世界最高峰の自転車ロードレースといわれる「ツール・ド・フランス」や、陸上の「パリ国際マラソン」、さらにはフランスでのプロゴルフツアー、海洋競技ではセーリングイベントも手がける、フランスの老舗イベントオーガナイザーです。

ダカールラリーにライダーとして参加する条件を教えてください。

基本的には国籍、性別を問わず、年齢が18歳以上であり、FIM(国際モーターサイクリズム連盟)が発給するFIMクロスカントリーラリーライセンスを所持していること、参加車両を運転することができる運転免許証を持っていること、などがあります。

同時にダカールラリーの主催者は、ラリーに参加するに相応しい運転技術や経験値として認められる他のラリー参加歴があるか、健康状態がラリー参加に相応しいかを証明する医療機関の診断書などの提出を求めています。また参加にあたり、ダカールラリーが走行する場所、標高の高い場所を含む特別な状況下で行われるイベントであることを理解していること、などを考慮してエントリーの可否を決めています。

マシンのカテゴリーやクラス分けはありますか?

エントラントの技量、参加する車両、競技形態によって次のように分かれています。

ライダー グループ1 A.S.O.エリートライダー

メーカーなどと契約しているプロフェッショナルライダーを中心としたクラス。アマチュアの場合は過去の戦歴によって主催者が選出したライダーにより構成される。エリートライダーのリストは、主催者が制作する。ゼッケンプレートはイエローのベースにゼッケン番号を表示。

ライダー グループ2 A.S.O.エリートライダー以外

エリートライダー以外が属するグループ。ゼッケンプレートはホワイトベースにゼッケンナンバーを入れる。また、車両クラスによりスーパープロダクションクラスはSP、マラソンクラスはMの文字が入る。

車両 クラス2.1 スーパープロダクション 0~450cc

使用されるマシンは、公道を走行可能な販売されている車両をベースにしているもので、クロスカントリーラリーのレースに合わせた改良が可能。フレーム、エンジン、スイングアームなどは市販で入手可能なパーツを使う必要があるが、エンジンケース以外はFIMのクロスカントリーラリー(450cc)のレギュレーションに即した改良ができる。使用するエンジンは、最大排気量450ccで単気筒または2気筒と定められていましたが、2020年からは最大排気量は変わりませんが、単気筒のみと改められました。

車両 クラス2.2 マラソンクラス 0~450cc

マシンはスーパープロダクションと共通だが、ダカールラリーの大会期間中、エンジン(エンジンケース、シリンダー、シリンダーヘッドを含む)、フレーム、フロントフォーク、スイングアームの交換が認められていない。

ダカールラリーとはどんな競技ですか?

ダカールラリーは、クロスカントリーラリーの中でも開催日程、走行距離において最高峰のイベントです。

ロードブックを頼りに主催者が決めたルートを走破し、ラリー中の競技区間の累積走行時間を競うものです。

ラリーにはオートバイをはじめ、クワッドと呼ばれるバギー、四輪、トラックなど多くのカテゴリーが用意されています。これもこのイベントの伝統です。

ラリーではスタートからゴールまで絶え間なく走り続けるのですか?

毎日ラリーの宿泊地であるビバークをスタートし、その日の目的地となるビバークを目指します。

選手は目的地に向かってどのように走るのでしょうか?

主催者が制作した公式なロードブックを見ながら走行します。

ステージ中、選手たちがナビゲーションで注意することは?

迷わないよう確実にルートを見つけることです。

スタートの方法を教えてください。

一人つづ時間差をつけてスタートしてきます。

基本的には前日のSSの順位でスタート順と時間差が決まり、同時スタートの人数も定められています。

・1位~10位:3分ごとに1台ずつスタート

・11位~20位:2分ごとに1台ずつスタート

・21位~30位:1分ごとに1台ずつスタート

・それ以降:30秒ごとに1台または2台ずつスタート

横一列でモトクロスのような一斉スタートを行う場合も、前日SSの順位でスタート順が決まります。

・1位~10位:一斉スタート

・11位~20位:5分後に一斉スタート

・それ以降の順位:20人ずつが5分ごとにスタートしていきます。

なお、2輪が先で、4輪は2輪の最後のライダーがスタート後、30分~2時間の間隔をあけてスタートしていきますが、2輪、4輪の関係が逆転する場合や、2輪の上位、4輪の上位、2輪の下位、4輪の下位のように混ざっているステージも存在します。

カーナビのようなものを使うのでしょうか?

使いません。ロードブックを頼りに走行します。ただし、GPSは搭載しています。

マシンには、管理用のGPS(グローバル・ポジショニング・システム)を使った通信システムが搭載されています。いわゆる「カーナビ」的に目的地へと誘導するものではなく、競技者の位置、速度、走行している、停止しているなどを本部が把握するためのものです。停止時間が長いと、本部から衛星回線をつかった電話で状況確認がされます。これはライダーが転倒などで停まっているのかをいち早く確認し、必要なアクションをおこすためのものです。

また、このGPSにより、速度ログ、走行軌跡ログも管理されています。指定されたコースを逸脱、故意にショートカットをした場合など、当然ペナルティーの対象となります。

チェックポイント(CP)、ウエイポイントとは?

ステージ中に、参加者がルート上を正しく通過しているかを管理するためのものです。

チェックポイントやウエイポイントを正確にトレースしないと、タイムペナルティーが科せられます。

有人でオフィシャルが通過を確認するのがチェックポイント。参加者には公開されず、緯度・経度の座標で定義された通過点をウエイポイントといいます。チェックポイントもウエイポイントの一つとして機能しています。

ウエイポイントには次のような種類があります。

WPE ウエイポイントエクリプス

ロードブックに記載される通過点。座標の記載はなく、ルート上に順番に現れます。通過を確認するためには、ライダーはその座標位置の200m以内を通過しなければなりません。

スペシャルステージのスタート地点はWPEとなります。また、速度制限区間の開始地点と終了地点がWPEとなる場合、ライダーは座標点から半径90m以内を通過する必要があります。

WPM ウエイポイントマスク

隠されたウエイポイントです。スペシャルステージのフィニッシュ地点はWPMとなります。車両に搭載されるGPSのモニターは、ライダーがWPMの800m以内に接近した場合に、WPMの情報を表示し、通過を確認するためには座標点から200m以内を通過する必要があります。

WPS ウエイポイントセーフティー

鉄道、ガス、石油のパイプライン、道路の交差点など、危険箇所に設けられたウエイポイント。WPSの800m以内に接近するとGPSモニターにその情報を表示し、ライダーは座標点の90m以内を通過する必要があります。

WPM - WPS

WPV ウエイポイントヴィジブル

視認できるウエイポイントです。ビバークのスタート、フィニッシュのチェックポイントなどを指します。

WPC ウエイポイントコントロール

ポイントの半径300m以内に入って初めてGPSに【通過】と表示されるウェイポイント。過去のダカールラリーでは、ウエイポイントに半径800mまで近づくと、GPSにポイントの方向とそこまでの距離が表示される仕組みになっていました。しかし、近年ではWPCに変更され、ロードブックに記載された情報のみを頼りに通過ポイントを探さねばならず、これにより、ダカールラリーに挑戦するライダーたちは、より高いナビゲーション能力を求められるようになっています。

この他にも

SC スピードコントロール・ゾーン

GPS上で常に表示される仕組みとなっています。走行速度は各ゾーンによって異なりますが、最大速度は時速30km、50km、90kmのいずれかに制限されます。ゾーンの入り口と出口の間ではどんなルートを使おうと自由ですが、一度ゾーンに入ったら制限速度を守ったまま出口まで走行しなければなりません。ライダーはフィニッシュポイントを通過したのち、再加速することができるようになります。なお、スピードコントロール・ゾーン内にあっても、後述するDZとFZの半径90m以内は速度ペナルティーの対象にはなりません。

DZ スピードコントロールスタート地点

ライダーがスピードコントロールゾーンに入る際には、スタートポイント(DZ)から半径90m以内を通過しなくてはなりません。ポイントから半径800m以内に入った時点でGPSがポイントへのナビゲーションを開始し、90m手前に入った時点で再度、ポイントに近づいていることをライダーに知らせます。

FZ スピードコントロールフィニッシュ地点

ライダーがスピードコントロールゾーンを抜ける際にも、フィニッシュポイント(FZ)から半径90m以内を通過しなくてはなりません。

TC タイムコントロール

ステージには目標時間が定められており、時間内に走破できないとペナルティーの対象となります。

ビバークとは? 詳しく教えて下さい。

1つのステージがフィニッシュするチェックポイントと、次のスタートのタイムコントロールの間に位置するゾーンをビバークと呼びます。

ビバークは、いわゆるラリーのキャンプ地でもあり、翌日に備え、整備や食事、ブリーフィングなどを行うラリー中の生活の場でもあります。それだけにルールも厳しく、ビバーク内での制限速度は時速20kmで、危険な運転はもちろん禁止されるほか、参加者が食事を採るケータリングエリア内にバイク、クワッドで乗り付けることも禁止されています。

マラソンステージとは。

サービス車両やチームのサービスクルーが介在しない、2日間の連続したステージをマラソンステージと呼びます。

マラソンステージをスタートすると、翌日ビバークに戻るまでライダー自らがマシンのメンテナンスを行い、チームで助け合うなどして走破します。マラソンステージのビバークでも同様で、外部からのサポートは受けられず、ライダー、マシンが所定の場所から出ることを禁止されています。マラソンステージの起源は、過去のダカールラリーで行われていた1日1,000kmを越えるようなスペシャルステージを再現したもので、長いルートで起こる冒険ラリーらしいドラマを2日に分けることで今に伝えています。

どのようなペナルティーがあるか教えてください。

タイム、罰金、スタート拒否、失格などがあります。

エンジン交換・ピストン交換

ダカールラリーでは、ルートだけでなくマシンやスピードにも厳しいルールが定められています。レースは過酷さを極めますが、エンジンの交換にもペナルティーが科されるため、ライダーはマシンをうまくマネジメントしながらレースを進めていくことが求められます。また、2021年からは2回目のピストン交換を行った際には、エンジンのほかの部分が変わらない場合でも、タイムペナルティーを受けることになります。

初回 15分間のタイムペナルティー

2回目 45分間のタイムペナルティー

それ以降 毎回2時間のタイムペナルティー

音量制限

ダカールラリーでは、砂漠や砂丘地帯だけでなく公道を走るセクションも用意されているため、ラリーマシンには排気音の音量規制があります。2mMAX方式で118dB/A以下でなくてはならず、違反が発覚した際には以下のようなペナルティーを受けます。

初回 15分間のタイムペナルティー

2回目 1時間のタイムペナルティー

3回目 失格

速度違反

各ステージに存在するスピードコントロール・ゾーン(SC)では、走行速度が時速30km、時速50km、時速90kmのいずれかに制限されます。ゾーン内においてマシンに搭載されているGPSが速度超過を検知した場合には、ペナルティーの対象となります。

ロードブックで指定された速度を違反した場合

違反速度が時速1km~時速15kmの場合

1分間×スピード超過検知回数のタイムペナルティー+100ユーロの罰金

違反速度が時速16km~時速40kmの場合

2分間×スピード超過検知回数のタイムペナルティー+200ユーロの罰金

違反速度が時速40km以上の場合

初回 5分間のタイムペナルティー+300ユーロの罰金

2回目 10分間のタイムペナルティー+500ユーロの罰金

3回目 15分間のタイムペナルティー+700ユーロの罰金

4回目 60分間のタイムペナルティー+1500ユーロの罰金

さらに、再違反の場合は1000ユーロ以上の罰金もしくは失格になる場合があります。

リエゾンなど一般公道における速度違反

500m毎に記録されるGPSログをレース後にオーガナイザーが確認し、違反が発覚した場合には以下のペナルティーの対象となります。なお、ライダーは各国の速度制限に従って走行しなくてはなりません。

違反速度が時速1km~時速20kmの場合

30秒間×スピード超過検知回数のタイムペナルティー+100ユーロの罰金

違反速度が時速21km~時速40kmの場合

1分間×スピード超過検知回数のタイムペナルティー+200ユーロの罰金

違反速度が時速41km以上の場合

5分間×スピード超過検知回数のタイムペナルティー+300ユーロの罰金

なお、3回以上連続してスピード超過が検知されると失格になる場合があります。

チェックポイント、ウエイポイント

詳細はルール編チェックポイント(CP)、ウエイポイントとは?をご覧ください

このように、レース中の違反行為は厳しいペナルティーの対象となります。このほかにも、ブリーフィングの不参加には500ユーロの罰金、タイムカードの置き忘れ、紛失、破損には5分間のタイムペナルティーが科されるなど細かなものも設けられているため、その日の走行が終わったからといって気を抜くことはできません。過酷なレースを走りきる体力だけでなく、レギュレーションを詳細までしっかり頭に入れて臨まなくてはならず、知力・体力の両方が求められるのです。



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