
HRCエグゼクティブ・アドバイザーの佐藤琢磨は、ホンダテクニカルカレッジ関東の学生たちがレストアした1975年式ホンダ・シビックRSで、2026年のラリー・モンテカルロ・ヒストリックに挑戦しました。
「クルマは本当に美しく、まさに歴史あるラリーカーで、学生たちによって細部まで丹念にレストアされています。これらのシビックRSがもともと半世紀も前に造られたクルマだと考えると、本当に驚きです。私自身、ラリーは初挑戦で大きなチャレンジでした。そして学生たちの多くも日本を出るのが初めてで、今回の挑戦は本当にかけがえのない経験になりました!」
挑戦を終えたばかりの佐藤は、そう振り返ります。
ーー約10か月前、埼玉県ふじみ野市にある自動車大学校 学校法人ホンダ学園 ホンダテクニカルカレッジ関東からドライブのオファーを受けた佐藤は、迷うことなくこれを引き受けました。創立50周年を記念した特別プロジェクトとして、未来を担う学生たちが2台のシビックRSをレストアし、伝統あるヒストリックラリーへ挑む計画が動き出していました。
第28回大会は1月29日から2月7日まで開催され、フランス北部ランスをスタート地点に、最終目的地モナコを目指す約2,000kmの長い道のりが設定されました。雪や氷に覆われた山岳路、長時間に及ぶ夜間走行、さらにはアクシデントのリスクも伴う過酷な環境のなか、佐藤は1号車のステアリングを握りました。
しかし、挑戦はラリー本番の7日間だけではありません。事前のレッキ(コース確認走行)、車両整備、サービス作戦の立案、そして各地への長距離移動を含めると、欧州滞在中は約3週間にわたり、ほぼ休みなく作業と移動が続く極めてタイトなスケジュールとなりました。ブリュッセルからゲント、リヨン、ニース、モナコへと数百キロ単位の移動を繰り返しながら、学生たちは整備と準備を重ね、本番へと臨んだのです。
このラリーは、学生たちが自らレストアしたシビックRSの完成度を実地で試す、技術的にも非常に厳しい舞台でもありました。必要に応じて路上で修理を行う場面もあり、車両の信頼性と現場での対応力が問われる挑戦となりました。
1号車ホンダ・シビックRSは佐藤琢磨がドライバーを務め、川島颯太がコ・ドライバーとして同乗しました。176号車はホンダテクニカルカレッジ校長の勝田啓輔がドライブし、大嶋太陽がコ・ドライバーを務めました。


佐藤はこの挑戦を振り返り、次のように語りました。
「ホンダテクニカルカレッジ創立50周年という節目に、学生たちにとって非常に意義深い経験になったと思います。1975年式の美しいシビックRSをレストアしただけでなく、実際にラリー・モンテカルロ・ヒストリックに参戦できたことは、本当に特別な経験でした。
参加した学生たちの多くは10代後半から20代前半で、そのほとんどが初めての海外渡航でした。30人の学生が日本からフランスまで来ましたが、それ自体が大きな挑戦だったと思います。この経験は、彼らの将来を大きく広げる財産になったはずです」
今回のプロジェクトでは、車両製作にとどまらず、企画から実行までのすべてを学生たち自身が担いました。日本からフランスへの渡航手配、ベルギーにあるホンダ・モーターヨーロッパの物流拠点を経由した車両輸送、ホテルの手配、深夜に及ぶ整備作業、ロードブックの準備、さらには全行程のコ・ドライバー業務まで、あらゆる面で実践力が試されました。学生たちの挑戦を見守ってきた佐藤は、笑顔で次のように語りました。
「これはクルマづくりだけでなく、若い技術者を教育し、未来のホンダを支える人材を育てるという、ホンダが大切にしてきた価値観を体現する取り組みです。
フランスの車両規則を理解し、クルマを製作し、通関書類の手配や輸出手続き、宿泊先での食事の調理や手配に至るまで、すべてを学生たちがやり遂げました。そして過酷なステージを走り抜くために、整備や修理を含め、彼らは常に全力で取り組みました。ときにはその作業は深夜まで及んだこともありましたが、その情熱と技術は本当に素晴らしいものでした。準備が始まった昨年からの過程も含め、短期間のうちに彼ら一人ひとりが大きく成長していく姿を実感しました。学生たちの努力がなければ、完走することはできなかったでしょう。心から彼らを誇りに思います」

連日の作業と長距離走行を重ね、2台のシビックRSはフランスを南下し、2月7日未明にモナコのゴールへ無事到着しました。現地で待ち受けていた学生や教員たちから温かい出迎えを受け、この挑戦は成功裏に幕を閉じました。
しかし、これは終着点ではなく、新たな出発点でもあります。創立50周年という節目に刻まれたこの経験は、未来のホンダを担う若きエンジニアたちの確かな一歩となりました。
シビックRSのドアには、カレッジからのメッセージが誇らしげに掲げられています。
「これまでの50年に感謝を。そして次の時代へ進もう」

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写真 © ACM and © honda_gakuen_kanto