2024年にスーパーフォーミュラ・ライツを制し、2025年シーズンはスーパーフォーミュラ、SUPER GTに初参戦する小出峻選手(25歳)に注目が集まっています。
■スーパーフォーミュラ開幕戦でのサプライズ
先月、鈴鹿サーキットで行われたスーパーフォーミュラの開幕戦。そのグリッドには5人のルーキーが名を連ねていましたが、小出峻選手が最速になると予想する声は多くありませんでした。
スーパーフォーミュラ・ライツの前年度チャンピオンとしてトップカテゴリーに挑む小出選手でしたが、所属するのは1台体制で参戦するSan-Ei Gen with B-Max Racing Team。ここ数年は厳しい戦いが続いているチームであり、ルーキーが多数いる中でのデビュー戦にかかる期待は控えめなものだったかもしれません。
しかし、その予想を大きく覆す走りを見せたのが小出選手でした。デビュー戦の予選で7番手を獲得。ルーキー勢の中で最上位となっただけでなく、B-Max Racing Teamにとっても過去一年で最高位のグリッドをもたらしました。
ただ、決勝前のグリッドに向かう途中でセカンドギアを失うトラブルに見舞われ、スタートで出遅れてしまいます。レースが始まる前に勝負権を失ってしまう、悔しい展開となりました。それでも翌日の第2レースでは、冷静なドライビングで8位フィニッシュ。自身とチームに今季初のポイントをもたらし、今後のシーズンに向けて確かな手応えを感じさせる結果となりました。
■F4王者、ライツ王者。そして次なる舞台へ
小出選手は、確かな実績を携えてスーパーフォーミュラの舞台にやってきました。現スーパーフォーミュラドライバーの岩佐歩夢選手らとともに、2019年に鈴鹿サーキットレーシングスクール(現・ホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿)を卒業。その後、2022年にはFIA-F4選手権でチャンピオンを獲得し、翌年スーパーフォーミュラ・ライツへとステップアップしました。
2024年はB-Max Racing Teamから参戦し、期待に応えるかたちで8勝を挙げ、今季のスーパーフォーミュラ昇格を確実なものとしました。
「これまで日本のFIA-F4とスーパーフォーミュラ・ライツでタイトルを獲ってきたので、自分に対して期待されている部分があるのは分かっています」と小出選手は語ります。「でも、それで必要以上にプレッシャーを感じているわけではありません」
「自分の持っている力をしっかり発揮できれば、結果は自然とついてくると思っているので、正直いまは落ち着いた気持ちでシーズンに臨めています」
とはいえ、小出選手が今シーズンに向けて大きな目標を掲げていないわけではありません。チーム体制を一新したB-Maxの一員として、意欲的なビジョンを持って戦いに挑んでいます。「ルーキー・オブ・ザ・イヤーを取りたいと思っていますし、後半戦ではさらに成長して表彰台に上がりたいと思っています」と小出選手は語ります。
「チームにとっては、ここ数年の成績からすると大きなステップアップですが、エンジニアリング体制も大きく変わったので、不可能なことではないと思っています」
■SUPER GT、CIVIC TYPE R-GTでの挑戦
スーパーフォーミュラに加えて、小出選手は今年、SUPER GTの最高峰クラスであるGT500にも参戦します。Astemo REAL RACINGのドライバーとして、太田格之進選手に代わってHonda陣営の一員となりました。これまで2年間にわたり、Team UPGARAGEからHonda NSX GT3でGT300クラスに挑んできた小出選手は、今季からHonda CIVIC TYPE R-GT の17号車に乗り込み、ベテランの塚越広大選手とコンビを組みます。
小出選手は、開幕前最後の合同テストとなった富士スピードウェイでも、そのポテンシャルの高さを発揮。初日の終盤、ウエットコンディションの中でタイムシートのトップに立つ走りを披露しました。GT500マシンであるCIVIC TYPE R-GTの印象について、小出選手は次のように語っています。
「CIVIC TYPE R-GTは本当に運転しやすいです。シャシーやタイヤなど、すべての要素のレベルがとても高いのがよく分かります。とにかく安定していて、信じられないスピードでコーナーを抜けられるんです。ストレートも速いですし、“最先端”のマシンだと感じます」
そして開幕戦の岡山でGT500デビューを迎えると、レースでは最後の最後まで表彰台争いを繰り広げる素晴らしい走りを見せました。しかし終盤の接触により、結果は8位に終わる、悔しい展開となりました。
レース後、小出選手は以下のように振り返っています。
「表彰台が見えていただけに、本当に悔しいです。もったいなかったと思います。あの接触を回避するために、自分の中では違う選択が他にあったのではないかとも感じています。このレースをしっかりと振り返り、次はミスを繰り返さないようにして、自分の持っている力をすべて発揮したいと思っています。」
今季、小出選手と塚越選手のコンビがCIVIC TYPE R-GTに勝利をもたらし、タイトル争いに加わることができるかに注目が集まります。
「GT500でREAL RACINGのマシンに乗せてもらえるというのは、HRCやチームが自分を信頼してくれている証だと思っています」と小出選手は語ります。「でも同時に、それは1年目から大きな結果を求められているということでもあると感じていて、その期待にはしっかり応えたいという意識を強く持っています」
■佐藤琢磨という目標と海外挑戦への決意
今季はスーパーフォーミュラとSUPER GTの両シリーズで結果を残すことに集中している小出選手ですが、将来的には海外挑戦にも意欲を見せています。なかでもインディカー・シリーズには特に強い関心を抱いているようです。
「もちろん、将来的にインディカーに行きたいという思いはあります」と小出選手は語ります。「だからこそ、そこに挑戦するチャンスを得るために、自分が何をしなければならないのか、常に頭の片隅に置いています」
「スーパーフォーミュラやSUPER GTを観ている海外のファンの皆さんは、これらの選手権のレベルの高さを理解してくれていると思います。でも、いつか世界の舞台で、自分の力を海外のファンに直接見せられるチャンスが来ることを楽しみにしています」
「インディ500で2回優勝している佐藤琢磨さんは素晴らしい方で、本当に尊敬していますし、自分も琢磨さんのようになりたいと思っています。その目標に向かって、これからも全力で頑張っていきたいです」
鈴鹿でのスーパーフォーミュラ開幕戦で見せた鮮烈なスタートが今後を占うものであるとすれば、これから小出峻選手は、日本のみならず世界のファンにも、ますます知られる存在になっていくことでしょう。