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Honda HRCとティム・ガイザー、記録的なパートナーシップに終止符

ティム・ガイザーとHonda HRCの12年にわたる関係が、ついに幕を下ろします。スロベニア出身のライダーと日本メーカーによるこのパートナーシップは、数々の記録を打ち立てた特別なものとなりました。

世界中の多くのファンから「Tiga 243」の愛称で親しまれるガイザーは、2014年にチームに加入して以来、常に頂点を目指し挑み続けてきました。表彰台獲得、レース勝利、GP勝利、そしてチャンピオン獲得を前例のないペースで積み重ね、HRCでレースをする栄誉に浴した伝説的ライダーたちの中でも頂点に立つ存在となりました。

アマチュア時代のガイザーは、ヨーロッパ選手権および世界選手権125cc制覇など、多くの成功を収めていました。しかし、2013年に4ストロークマシンへ移行した際は厳しいシーズンを経験。その後の12年で彼が築くことになる栄光を予想できた者は当時ほとんどいませんでした。そんな中、スロベニアの地方出身の若者に可能性を見出したのがジャコモ・ガリボルディでした。チーム加入初年度はシーズンを通して着実に成長し、終盤には複数回のモト勝利も挙げ、2015年における#243の真価を期待させる存在感を示しました。

数戦の苦戦を経て、ガイザーは2015年モトクロス世界選手権(MXGP)トレンティーノGPでMX2クラス初優勝を達成。後にこのコースは、彼の「ホームトラック」と呼ばれる存在になります。シーズン中盤以降は完全に流れをつかみ、シリーズの主導権を掌握。最終戦グレン・ヘレンでは感動的な場面の中でチャンピオンに輝き、自身の名を世界に刻むと同時に、HRCの世界舞台への復活を力強く宣言しました。

その勢いのまま迎えた2016年、ガイザーはチームとともにMXGPクラスへの昇格という大胆な決断を下します。ルーキーながら連覇を狙う挑戦でしたが、開幕戦カタールで1-1フィニッシュを果たし、その判断が正しかったことを即座に証明しました。その後もシーズンを通して安定した結果を残し、ある期間は8モト中7モト勝利という圧巻の走りを披露し、堂々の2年連続世界王者に輝きました。

2017年は好調なスタートを切ったものの、負傷により失速。さらに2018年は、プレシーズンのクラッシュの影響でキャリア史上最も厳しい一年となりました。それでも2019年トレンティーノGPで優勝を飾り、実に約19カ月ぶりに表彰台の頂点に立ちます。そこから勢いは一気に加速し、7戦連続GP勝利の快進撃で、残り3戦を残して3度目のタイトルを確定。舞台となったイタリアのイモラは、スロベニアから押し寄せたファンたちの歓喜に包まれました。

新型コロナウイルスの影響を受けた2020年シーズンでも、ガイザーの快進撃は止まりませんでした。終盤戦で5勝を挙げるなど力強い走りを見せ、トレンティーノでの勝利も含め、100ポイント以上の大差で4度目のチャンピオンを獲得しました。引き続き変則的なスケジュールの中で行われた2021年のシーズンでは、激しい三つ巴のタイトル争いが最終モトまでもつれ込み、ガイザーはわずか20ポイントの差でタイトルを逃しました。しかし止まることを知らないガイザーは翌年、GP10勝と100ポイント以上の大差を築く圧倒的なシーズンを経て、5度目の世界王者に輝きました。

2023年のプレシーズン、ガイザーは深刻なクラッシュに見舞われ、シーズンの大半を欠場することに。しかし終盤には2勝を挙げてその健在ぶりを示し、2024年のタイトル獲得に向けていい流れを築きました。そして迎えた2024年は、シーズンを通した激しい一騎打ちの末、わずか10ポイント差で残念ながらタイトルを逃しました。

2025年は開幕から5戦を圧倒的な走りで支配し、6冠達成が現実味を帯びていましたが、スイスでの不運なアクシデントにより、タイトル争いから無念の離脱を余儀なくされました。彼にとって、ピエトラムラタでのレースがHRCの一員として最後のGP勝利となり、数千人のファンに囲まれた舞台での勝利は、まさに彼にふさわしい、象徴的なフィナーレとなりました。

HondaおよびHRCに関わるすべての関係者一同は、トラック内外で計り知れない功績を残し、ブランドの歴史において欠かせない存在となったティム・ガイザーに、心から感謝の意を表します。HRCは、チーム史上最多勝利を誇るライダーとして新たな道へと歩み出す彼の今後の活躍を心より願っています。


■HRC MXGPゼネラルマネージャー マーカス・ペレイラ・デ・フレイタス

「これほど長い年月、ティムと共に仕事ができたこと、そして彼がライダーとしてだけでなく、1人の人間として成長していく姿を見守ることができたことは大きな誇りです。幾度となく困難に直面しながらも、そのたびに彼はより強く、より完成度を高めて戻ってきました。それは、HondaおよびHRCと共に過ごしたすばらしい時間の中で証明されていると思います。大きな可能性を秘めた才能ある少年としてチームに加わり、5度の世界チャンピオンとしてチームを去っていく。その事実こそが、彼の人間性を物語っています。チームの全員と友情を築いてきた彼との別れを、皆が寂しく思うでしょう。しかし、これがモトクロスというものです。時にはこうした別れも訪れます。だからこそ、彼の未来がもたらすすべてに、心からの成功を願っています」


ティム・ガイザー Honda在籍時の主な記録

FIMモトクロス世界選手権MXGP:4回優勝

FIM モトクロス世界選手権 MX2:1回優勝

MXGP 総合優勝:47回

MX2 総合優勝:5回

レース勝利:116回

表彰台獲得:125回

FIM モトクロス・オブ・ネイションズ クラス優勝:2回

※ FIMとは、Fédération Internationale de Motocyclisme(国際モーターサイクリズム連盟)の略称