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【HRC US社長 デイビッド・ソルターズインタビュー】HRC USの経験豊富な人材にさらなる活躍の場

【HRC US社長 デイビッド・ソルターズインタビュー】HRC USの経験豊富な人材にさらなる活躍の場

新体制でもアメリカのレース最優先は基本変わらず
新規としてHRC USはF1パワーユニットの開発にも関与

Q: HPD(ホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント)はHRC US(ホンダ・レーシング・コーポレーション・ユーエスエー)となりましたが、変わったことはありますか?

HRC US社長 デイビッド・ソルターズ(以降、DS): これまで通り、私たちにとっての最優先はインディカーやIMSA GTP、バハでのオフロードレースをはじめとするアメリカン・ホンダ・モーターのアメリカでのレース活動です。

しかしHRCの新体制下ではF1のパワーユニット開発にも関わっていくことになりました。

Q: F1に関与することになるのは、大きな変化でしょう。そうなった経緯を教えてください。

DS: HRC USには非常に優秀なエンジニアが多く在籍しているので、F1のパワーユニット開発においてどういった貢献ができるかを考えました。日本のHRCのエンジニアたちもHRC USのエンジニアたちも全員がHondaのために働いています。深い専門知識を持つ彼らが互いに助け合える環境を整えるのは大きな意義のあることです。まずは共同で取り組める分野を見極めることが必要と考え、検討の結果、HRC USはF1のパワーユニット開発に関与することになりました。

Q: アメリカではF1人気が急上昇中で、今年はグランプリが3大会も開催されます。HPD時代からF1への関与を希望する声が上がっていたのですか?

DS: 我々のエンジニアの中にはF1で働いた経験を持った者が少なからずいます。さまざまなチームに在籍した人々です。世界中から優れた人材が集まっているのです。このように多様な文化が共存した会社となっているのもHRC USのいいところです。

Q: HRC USという組織はこれから大きくなっていくのでしょうか?

DS: エンジニアはすでに十分な人数がいるので、現状では新たに募集をして人数を増やす必要を感じていません。今いるエンジニアたちは、現在F1にパワーユニットを供給しているマニュファクチャラー各社から集まってきています。レースの世界に入って、Hondaで働きたいと考えるようになる人は大勢いるからです。私もその一人です。カリフォルニア(HRC USの本拠地)で働きたいと考える人も多いのではないでしょうか。Hondaのすばらしいところは、真のレーシング・カンパニーであり、レースをし続けて来た伝統を持っているところです。HPD時代から社内にはしっかりとしたHondaの文化が根ざしていました。Hondaの歴史を敬い、社内の人々がお互いを尊敬し合って働いています。それはほかの企業、あるいは今日のビジネス社会において当たり前のことではありません。


IMSA GTPのマシンは最高のものを作り上げた

Q: Acuraがルマン24時間レースに参戦する計画はありますか?

DS: IMSAが2023年からマシン規定を新しくしたので、まずはいいマシンを作ることが我々の第一の仕事と考え、すばらしいマシンをフランスのオレカとともに作り上げました。そこまでが第一段階で、今後どうなって行くのか、我々は状況を見て判断をしていきます。次に何をするにしても、それらは理にかなっていなければなりません。自分たちの戦える場なのか、Honda及びAcuraのビジネスにメリットがあるのか。深く観察し、検討したいと思います。


Honda Racing THANKS DAYに感激

Q: 昨年は日本でレースを視察し、モビリティリゾートもてぎでのHonda Racing THANKS DAYにもいらっしゃったと聞いています。

DS: スーパーフォーミュラの視察に訪れましたが、マシンはとても洗練されていて、ドライバーたちは非常に優秀で、レースのクオリティも高いと感じました。

 Honda Racing THANKS DAYは実にエキサイティングでした。あれはHondaにしかできないものですね。ピットレーンに立つと、Moto GPのチャンピオンがいて、F1チャンピオンのマックス・フェルスタッペンがいて、インディ500チャンピオンの佐藤琢磨がいて、スーパークロスやトライアルのチャンピオンがいました。こんなこと、Honda以外では叶わないことです。私はレース好きなので、大いに感激しました。Hondaで働く一員であることに大きな誇りを感じ、そこに集まったファンの皆さんが楽しい時を過ごしているのを見て嬉しく思いました。我々はファンのためにレースをしているのですからね。Hondaの人々と力を合わせ、いいレースを戦って、これからもファンの方々に楽しんでもらいたいです。

 モビリティリゾートもてぎのミュージアム(ホンダコレクションホール)訪問も本当に楽しめました。私は最近アメリカの市民権を取得したのですが、元々はイギリス人で、出身はマン島に近いリバプールです。ミスター・ホンダ(本田宗一郎)が作ったマン島で戦うためのモーターサイクルをコレクションホールで見ることができ、大変感激しました。排気量250cc/最高回転数18,000rpmのマシンについては話に聞いていました。それをこの目で直接見ることができました。そして、マクラーレン ホンダ MP4/4もありました。あれは私にとって最も美しいレーシングマシンです。アイルトン・セナが走っていたF1を見ていた世代ですから。


GTPで戦う、より優秀なドライバーを常に求めている

Q: HRC USの前身であるHPDはアメリカの中級フォーミュラカー・シリーズのチャンピオンを日本のスーパーフォーミュラに挑戦させる奨学制度を作りましたが、日本のドライバーをアメリカのレースに出場させる計画はありますか?

DS: その検討は行います。そして、やる価値があるという答えが出たら、すぐさま実行に移します。我々は常にベストのドライバーを求めています。基準は非常に高く設定してありますが、それらに見合う力を持ったドライバーが日本にいれば、アメリカのレースへ参戦してもらいたいですね。


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