【HRC社長 渡辺康治インタビュー】HRCのワンブランド体制でグローバルに更なる躍進を
HRC US最初のレースはデイトナ24時間レース
Q: 今回、デイトナ24時間レースに初めて足を運びましたね?
HRC社長 渡辺康治(以降、KW): 北米でHondaのレースをやってきたHPD (ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント)が昨年の9月にHRC US (ホンダ・レーシング・コーポレーション・ユーエスエー) に社名を変え、連携を深めてきましたが、その新しい体制での最初のレースがデイトナでした。一緒に活動してきた成果を見届けようと現場に来ました。
日米欧の連携を深めて効率アップ
Q: HRC USはF1にも関与をしていくということですが、具体的に、すでに始まっていることはありますか?
KW: F1のパワーユニットの電動系のところの開発とサポートに入ってもらっています。開発は日本のHRCがメインでやっていきますが、HRC USがそこに加わる形です。HRC USの前身となるHPDにはインディカーのハイブリッドシステムの開発という内燃機関の実績があり、HRCとしては電動の部分に知識とマンパワーが欲しかったためです。まだHRCとHRC USが一緒に働くプロジェクトは始まったばかりで少人数のみ関わっている段階ですが、今後相乗効果が生まれることに非常に大きな期待を寄せています。HRC USとしても、F1をサポートすることで彼らのレベルが上がることに強く期待しており、もうすでに効果が現れているようで、一緒にやることでいろいろと勉強になるという話などを耳にすると、実感がわきます。
Q: HRCはヨーロッパにも拠点を作る計画ですか?
KW: 2026年からのF1のパートナーであるアストンマーティンはイギリスの会社ですから、パワーユニット供給に向けて拠点を立ち上げようと考えています。
Q: HRCとHRC USの間で人材を派遣し合うことなども出てくるのでしょうか?
KW: 実際にHRCの人間をHRC USに、あるいはHRC USの人間を日本に駐在させるかは分かりませんが、HRD Sakuraにはすでに定期的にサンタクラリータ(カリフォルニアにあるHRC USの本拠地)から人が来ていますし、お互いに出張ベースにはなりますが、交流は拡大しています。
Q: 交流開始から数カ月ですが、すでに効果は現れているのですね?
KW: そうですね。HRC USは参戦しているIMSAシリーズでの様々なデータ管理をするのにHRD Sakuraの作り上げたソフトウェアを使いだしたのですが、それをさらに進化させました。F1用に作ったソフトウェアは元々パワーユニットだけの管理を行うものでしたが、IMSAでは車体側の管理もしていく必要があるため、そちらへと能力を広げたのです。
2026年からのF1に向けた準備が最優先
その後に新プロジェクトも
Q: Hondaのモータースポーツの大きな柱はF1、インディカー、IMSA GTP、日本のスーパーフォーミュラとSUPER GTとありますが、今後HRC USが新しいカテゴリーに進出していく可能性はありますか?
KW: HRCのワンブランド体制として協調関係を強化したのは我々にとって第一のステップで、次なるステップとして、HRC USが将来的にグローバルレースに出て行く可能性はあります。例えば、現在の我々の計画にはありませんが、仮にWEC(世界耐久選手権)に参戦することになれば、当然IMSAで活動している経験が役に立つでしょうから、HRC USが担当することになるでしょう。WECへの参戦計画は現在の我々にはないのですが、非常に興味はあります。しかし今の優先順位では、2026年からのF1をしっかりと準備していくことが一番です。
日本人ドライバーもグローバルに
Q: 今年のIMSAシリーズでのAcuraはWayne Taylor Racing with Andrettiの1チームからGTPクラスに2台を参戦させています。日本人ドライバーがGTPに参戦する道をHondaが用意する計画はありますか?
KW: 我々の日本以外のレースというと現在はF1で、そちらに日本のドライバーを乗せたいという思いはこれからも当然続いていきますが、それだけでは足りません。日本人ドライバーに海外で活躍する場を提供していく、準備していく検討に入りたいと考えているところです。
Q: SUPER GTで活躍するドライバーたちの中には、「GTPにチャレンジしたい」という人がいるのでしょうか?
KW: いると思います。日本のGT300と500がある混走のレースでしっかりとマシンが操れる人であれば、アメリカのIMSAシリーズのレースでもうまくドライバーとして務め上げることが可能でしょう。是非トライさせてみたいと思います。
Q: そういうドライバーが誕生するのは今シーズン中でしょうか、来シーズンでしょうか?
KW: 「今年から」ということではなく、「来年からやります」とも言い切れませんが、なるべく早いタイミングでやりたいとは考えています。HFDP(ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト)やSUPER GTで活躍したドライバーたちに、次のステップ、世界での戦いの場というのを作ってあげたいと思います。