しかし、第2戦インドネシアGP以降は、大きく流れが変わります。マルク・マルケス(Repsol Honda Team)がケガで序盤の数戦を欠場、その後、戦列に復帰するも2020年に骨折した右腕上腕の再手術を行うことが決まり、再び戦列を去りました。開幕戦カタールGPで好調なスタートを切ったポル・エスパルガロも、その後は苦戦が続きました。Honda勢不調の原因は果たしてなんだったのか? その対策はどう進んでいるのか? アルベルト・プーチHRC監督がシーズン前半を振り返ります。

・・・ウインターテストでは競争力のあるマシンに見えましたが、第2戦インドネシアGP以降は、期待通りの結果を残せていません。

「その通りです。シーズン序盤、2022年型マシンはとても競争力があると思えたのですが、その判断は最終的には間違っていました。最初のテストと最初のレースで、おそらく、現実とは違うインフォメーションを得たことで状況を誤解してしまったのだと思います。インドネシアGPから、状況はさらに悪化し、そして私たち全員、何が起きたのか分かるところまで来ました。マルク・マルケスは右腕の手術のために(第8戦イタリアGPを終えて)シーズン途中で参戦をストップしました。私たちのライダー全員が多くの転倒を経験しました。そして、いいポジションで戦うことができませんでした。これらすべてが昨年の2022年型マシンのテストから、計画して期待したことを見つけられなかった結果だと思います」

・・・別のトラックレポートでは、「どこに問題があるのか、それを見つけた」と書かれていましたが……。

「基本的に問題がどこにあるのか、ということは分かりましたが、それを改善するのは簡単ではありません。もし簡単であれば、すでに解決しているはずです。私たちはシャシーに問題があると考え、そう信じています。いくつかの解決策を試みましたが、まだはっきりとした答えは出ていません。問題を理解していないのではありません。私たちが達成しなければならないのは、問題の解決策を見つけることです」

・・・MotoGPチームの監督記者会見で、あなたは 「今後の戦略を変えなければならないかもしれない」と言っていました。

「『かもしれない』ではなく、目標を達成していないのだから『やらなければならない』と思います。Hondaは、レースの世界で、特に2輪では常にリーダーであり続けた会社です。これが私たちのDNAなのです! この目標を達成していないのだから、アプローチを変える必要があります。過去にもそうしたことをやってきました。今、再びやらなければならないのです」

・・・シーズン後半戦にどう挑みますか?

「ライダーたちの視点では、一つのストーリーがあり、会社の立場からは、別のストーリーがあります。彼らはマシンに乗り、我々Hondaが与えたマシンでベストを尽くします。会社から見たら、今のこの状況は、だれもうれしく思っていません。解決策を見つけ、理解するために必要なことはすべてやらなければなりません。唯一言えることは、日本でこの仕事をやり遂げようとしていることです。そしてヨーロッパのスタッフとRepsol Honda Team全体が、今の状況から抜け出すために、そして何ができるかを分析しようとしていることです」

・・・将来のためにマシンを改良すること。もしくは、今シーズンできるだけ早くよい結果を出すこと。現時点ではどちらが重要なのでしょうか?

「最も重要なことはマシンを改善し、いつものHondaのレベルに戻すことです。これが最優先すべきことです」

・・・マルク・マルケス選手について、最新情報を教えてください。

「手術以降、彼の腕の状態はよくなっています。今回はすべてが順調に進むことを期待しています。彼の体調も問題はなさそうです。ドクターも喜んでいます。日に日によくなっています。あとは骨の回復を待つだけです」

・・・HRCにとって、今年の最後のテストで彼が2023年型マシンに乗ることは重要なことなのでしょうか?

「最優先事項は、彼の腕が完全に回復することです。彼もそれを分かっています。これが私たちの状況であり、今後やっていくことです」

・・・彼は将来のRC213Vについて心配しているようです。夏の間にバイクの開発を見守りたいと言っています。

「もちろん、彼は心配しています。私たちみんなが心配しています。彼はおそらく夏の間にいくつかのレースに参加して、どのような進展があるのか、どのようなプランがあるのかを確かめようとすると思います。私たちは彼がトラックに来ることを喜んで歓迎します」

・・・ポル・エスパルガロはドイツで転倒しました。ドイツではレース途中でリタイア、アッセンはレースを欠場しました。帰国して医師の診察を受けましたが、今はどうですか?

「ザクセンリンクは大きな転倒でした。その結果、彼はザクセンリンクもアッセンでもレースができませんでした。通常、じん帯やろっ骨を含むケガは非常に痛みがあります。骨折するよりも痛みがひどいときがあります。痛みを抱えたままMotoGPマシンを何周も走行することは不可能です。彼がこの期間にしっかり休み、いいコンディションでシルバーストーンに戻ってくることだけを願っています。彼はイギリスのサーキットが好きです。いいパフォーマンスを見せてくれると信じています」

・・・チームマネージャーとして、チームやパートナー、そして応援してくれるファンにどのように希望を与えることができるでしょうか?

「この状況で唯一できることは、後退や足踏みが続いていたとしても、前に進み続けることです」

シーズンは残り9戦。オランダGPを終えて5週間の夏休みに入りましたが、8月からは後半戦がスタートします。その最初のレースとなる第12戦イギリスGPからHondaは、再び頂点を目指し全力を尽くします。