インドネシアでは、1996年と1997年の2回、ロードレース世界選手権が開催されました。いずれも首都ジャカルタ近郊のセントゥルで開催され、いずれも、Repsol Honda Teamのミック・ドゥーハン(1996年)と岡田忠之(1997年)が、HondaNSR500で優勝しています。
新サーキット、マンダリカ・インターナショナル・ストリート・サーキットは、海に面した一周4.301kmのコースで、ほぼ平坦な地形にあり、最終セクションに緩い登りがあるだけです。セクター1とセクター4は、中低速コーナーが連続しますが、サーキットのほとんどが中高速コーナーの連続するハイスピードコースで、今回の公式テストの最高速度は310km/h前後。1周の平均速度は約170km/hでした。
サーキットはパドックや周辺設備の工事が現在も続いており、その影響もあり路面が汚れていましたが、3日間を通じて、路面コンディションはよくなり、グリップも上がりました。その結果、3日間の総合タイムでは、トップから1秒差に21台がひしめきあう大接戦となり、3月の本番では、さらにタイムが上がることが予想されます。
その大接戦の中でトップタイムをマークしたのは、Repsol Honda Teamで2年目のシーズンを迎えるポル・エスパルガロでした。2日間で行われたマレーシアテストもタイムが接近する厳しさでしたが、その中でエスパルガロは、トップから0.289秒差の10番手でした。そのテストを終えたときにエスパルガロは、「2022年型RC213V」に非常に手応えを感じたと語っていましたが、マンダリカテストでは、1日目と3日目にトップタイムをマークして仕上がりのよさをアピールしました。昨年はPP1回、2位表彰台1回という成績でしたが、今年はチャンピオン争いが期待されます。
2年ぶりのウインターテスト参加となったRepsol Honda Teamのマルク・マルケスは、マレーシアテストに続き、着実にセットアップを進めました。マルケスは、昨年のシーズン終盤に右目を痛め、2カ月間トレーニングができませんでした。その身体作りの遅れを取り戻すため、マレーシアに続き、今回も多くの周回を刻むことに集中しました。
30度前後の暑さが続く中で、マルケスは3日間で212ラップを刻み、2日目に2番手タイムをマーク(総合9番手)しましたが、初日と3日目は、周回数を刻むことに集中しました。そして最終日3日目には3度のロングランを実施。1分32秒台で連続ラップを刻み、着実にパフォーマンスが戻ってきていることを感じさせました。
20年シーズンは右腕上腕を骨折し、3度の手術のため、治療とリハビリに9カ月間という多くの時間を費やしました。シーズン途中に復帰した昨年は、ウインターテストに参加できず、体力不足という厳しい状況の中で3勝を挙げました。ウインターテストに参加した今年は本来のパフォーマンスを取り戻すテストに取り組み、予想以上に大きな成果を達成しました。開幕戦カタールGPは3年ぶりとなりますが、3年ぶり7回目のタイトル獲得に向けて、まずは一歩前進のウインターテストとなりました。
LCR Honda CASTROLで2年目、MotoGPクラスで3年目を迎えるアレックス・マルケスは、マレーシアテスト、そしてマンダリカテストと着実に前進しました。特にマンダリカテストでは、大接戦の中で14番手。最終日3日目は19ラップのロングランに挑み、1分32秒から33秒台で連続ラップをこなし、大きな成長を感じさせました。エスパルガロ、そして兄のマルク同様、22年型RC213Vの仕上がり自信を付けているだけに、2年ぶりの表彰台獲得とMotoGP初優勝が期待されます。
MotoGPクラスで5年目のシーズンを迎えるLCR Honda IDEMITSUの中上貴晶は、マレーシアテストに続き、22年型RC213Vのセットアップに集中しました。マレーシアテスト、そしてマンダリカテストと中上は仕様の違う車体のテストに多くの時間を割き、サーキットやコンディションの違いに適応できるデータを蓄積しました。
中高速コーナーが連続するマンダリカは、開幕戦の舞台となるロサイル・インターナショナル・サーキット同様、中上が得意とするレイアウト。最終日は、2つのサーキットで5日間に及んだウインターテストの締めくくりとして20ラップのロングランに挑み、チームメートのアレックス・マルケスとほぼ同じ1分32秒台で連続ラップをこなしました。今年は念願の初表彰台、初優勝に挑むシーズン。ウインターテストの成果に注目です。
こうして、マレーシア・セパン(2月5、6日)に続き、インドネシア・マンダリカで行われたMotoGPクラスのウインターテストは、これですべて終了となります。開幕戦カタールGP決勝まであと3週間。選手たちはシーズン開幕に向けて体調を整え、開幕戦の舞台となるカタールへと向かいます。