Honda勢が歴史的なアッセンに挑む
第11戦オランダGPが、6月24日(金)~6月26日(日)までの3日間、オランダ北東部に位置するTTサーキット・アッセンで開催されます。2020年はコロナ禍の中で大会がキャンセルされましたが、21年に復活し、今年も例年通り6月下旬に開催されます。
オランダGPは、グランプリで最も長い歴史と伝統を誇り、今年で73回目を迎えます。グランプリの歴史において、第1回大会から同一サーキットでの連続開催はオランダGPのみ。大会がキャンセルされたのは、20年の大会が初めてのことでした。
オランダGPの開催されるアッセンは世界で最も長い歴史と伝統を誇るサーキットです。1925年に「ダッチTT」がスタートし、49年にグランプリがスタートしました。当初は「ダッチTT」にグランプリが併催される形での開催でした。そして、オランダGPは伝統的に6月最終週の土曜日に決勝レースが行われてきましたが、16年の68回大会から日曜日に開催されています。
毎年10万人前後の観客を集めるオランダGP。昨年は観客数を大幅に制限しての開催でしたが、今年は制限なしでの開催が復活します。
長い歴史を誇るアッセンのコースレイアウトは、これまで数多の変遷をたどってきました。グランプリが開催された当初は、公道を使用する16.536kmのロングコースでしたが、その後はマシンやタイヤの進化に合わせ、何度もコースが改修されました。2006年には、コースの大幅な改修が実施され、レースファンにもっとも親しみのある伝統的な5.997kmのコースは4.555kmに短縮。コーナーの数も23から18へと少なくなりました。
5.997kmの旧コースは、高速コーナーが連続するリズム感あふれるレイアウトで、選手たちから愛されていました。現在の4.555kmのコースは、周回数を多くすることで、サーキットを訪れる観客やテレビの視聴者を楽しませようという、時代のニーズに合わせたものですが、旧コース同様、高速サーキットという特徴に変わりはありません。
フィリップアイランド(オーストラリアGP)、シルバーストーン(イギリスGP)、ムジェロ(イタリアGP)に匹敵するこの高速サーキットは、流れるような走りができることから選手たちから高い評価を得ています。また、パッシングポイントが多いことから、毎年、熱いバトルが繰り広げられます。
その一方で、アッセンは天候が変わりやすく、ときに選手たちを悩ませます。目まぐるしく変化する天候は“ダッチウェザー”と呼ばれ、天候に合わせたセットアップがリザルトに大きく影響するため、チームと選手には集中力が求められます。
19年の大会でHondaは、1959年6月にグランプリ参戦を開始してから60周年を迎えました。それを記念するセレモニーを行い、Hondaのヒーローであるミック・ドゥーハンさん、今年亡くなった高橋国光さんが当時のGPマシンに乗ってデモンストレーションラップを行い、サーキットに集まったファンを喜ばせました。
昨年同様、今年のオランダGPは、ドイツGPからの連戦となり、猛暑となった前戦ドイツGPでHonda勢は苦戦を強いられました。ポル・エスパルガロ(Repsol Honda Team)は、フリー走行の転倒で痛めたろっ骨の影響でレース中盤にリタイアを決断。アレックス・マルケス(LCR Honda CASTROL)はトラブルが発生してリタイア。中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)はレース前半に転倒を喫しリタイア。欠場しているマルク・マルケス(Repsol Honda Team)の代役として出場しているステファン・ブラドルは完走しましたが、16位に終わりポイントを獲得することができませんでした。
ドイツGPで、暑さとろっ骨の痛みでリタイアしたポル・エスパルガロは、連戦となる今大会も体調は万全ではなく、厳しい走りが予想されます。しかし、シーズン前半を締めくくる大会となるだけに全力を尽くす意気込みです。過去、アッセンでは、125cc時代の2010年に3位、13年にはHondaエンジンを搭載したMoto2クラスで優勝しました。MotoGPクラスでは16年の4位が最高位。昨年は10位でした。
マルク・マルケスの代役として出場のブラドルは、カタルニア、ドイツに続き、これが3戦連続の代役出場となります。カタルニアではレース序盤に転倒を喫しリタイア。先週のドイツGPでは、猛暑の中で熱問題を抱え16位とノーポイントに終わりました。アッセンでレースに出場するのは16年大会以来となりますが、ドイツGPの問題解消に取り組み、その雪辱に挑みます。
中上は、第6戦スペインGP、第7戦フランスGPで連続7位、第8戦イタリアGPで8位と3戦連続でシングルフィニッシュしていますが、第9戦カタルニアGP、第10戦ドイツGPと2戦連続で転倒リタイアに終わりました。これまでアッセンでは、Moto2時代の16年に、現在MotoGPクラスを戦うヨハン・ザルコ(ドゥカティ)とフランコ・モルビデリ(ヤマハ)を破り初優勝を達成しました。MotoGPクラスでは、昨年の大会で予選4番手、決勝9位という結果を残しています。この数戦、転倒が続いている中上としては、シーズン前半戦の締めくくりとなる大会で悪い流れに終止符を打ち、今季ベストリザルトを目指します。
チームメートのアレックス・マルケスも、シーズン前半戦の締めくくりとなるオランダGPで、復活を果たす意気込みです。今年は苦戦が続き、第5戦ポルトガルGPの予選7番手、決勝7位がベストリザルトです。予選では、ポルトガルGPを除いてQ2進出を果たせず、その結果、決勝も厳しい戦いを強いられています。加えて前戦ドイツGPはメカニカルトラブルでリタイアとなりフラストレーションをためています。これまでアッセンでは、Moto3クラスでタイトルを獲得した14年に優勝、Moto2クラスでは18年に3位表彰台に立っています。今大会はフリー走行、予選で好位置を獲得し、決勝ではポルトガルGPの7位以上を目指します。