Honda HRCチームがスーパーバイク世界選手権2025年シーズンを開始
2025年スーパーバイク世界選手権の開幕を数日後に控え、Honda HRCチームは2025年シーズンの体制を正式に発表。ライダーのチャビ・ビエルゲとイケル・レクオーナ、そしてチームマネージャーのホセ・エスカメスが今シーズンの目標と展望について語りました。
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2月10日、Honda HRCチームは2025年シーズンのプロジェクトと2025年スーパーバイク世界選手権に参戦するマシン、CBR1000RR-Rをデジタル形式で発表しました。
Honda HRCチームの2025年型CBR1000RR-Rの印象的なカラーリングには、新たなスポンサーのIxonが加わり、さらに新たな技術パートナーとしてÖhlinsがチームをサポートすることが決定しました。これに加え、Motul、Akrapovič、Nissin、One Heart – Satu Hati、ASICS、Bonamici Racing、NGK、RK、Shindengen、STM、Pirelliとの長年にわたる貴重なパートナーシップも継続します。
HRCの公式FacebookおよびYouTubeページで公開されたデジタル発表では、ファクトリーライダーのチャビ・ビエルゲとイケル・レクオーナが、それぞれチームと共に4年目のシーズンに挑むにあたっての目標を述べました。Honda HRCチームマネージャーのホセ・エスカメスは、市販車ベースのスーパーバイク世界選手権における挑戦、期待、そして戦略について言及しました。
冬季期間中、日本人エンジニアたちはCBR1000RR-Rのセットアップ、エレクトロニクス、サスペンションを含むあらゆる面においてアップデートを行いました。これらのアップデートについて、ファクトリーチームはスペインのヘレス・サーキットとポルトガルのアルガルベ・インターナショナル・サーキットで行われた有意義なテストセッションで既に確認を行っています。チームの最終的な目標は、いつもと変わらず、2024年シーズンに築いた進歩をさらに発展させ、トラックで最高の結果を追求し続けることです。
Honda HRCチームは、2月17日〜18日にオーストラリアのフィリップアイランド・サーキットで最終プレシーズンテストを実施。その後、2月21日〜23日に同サーキットで開催されるスーパーバイク世界選手権の開幕戦に向けて準備を整えます。
チャビ・ビエルゲ:
Honda HRCチームでの4年目のシーズンとなりますが、この3年間で学んだことは何ですか?また、2025年の目標を教えてください。
多くのことを学びましたが、最も重要なのは、焦って道を見失うのではなく、着実な歩みを進めながら体系的に取り組むことの大切さを理解したことだと思います。まず2025年シーズンの第一の目標は、開幕時に少なくとも2024年シーズン終盤と同じレベルでスタートを切ることです。昨シーズンの終盤には、安定したベースセッティングを見出し、トップ勢と近い位置で戦えるようになりました。そのため、プレシーズンをしっかりとこなし、開幕戦から最速のライダーたちと近い位置でレースを展開し、そこから最後の一歩を踏み出せるようにすることが目標です。
ガレージ側に、新しいクルーチーフが加わったことも含め、いくつかの変更がありましたね。
はい、今シーズンはチーム体制が少し変わりました。まだ一緒に仕事をした期間は短いものの、第一印象は良好です。新しいクルーチーフは豊富な経験を持っているので、その経験から多くを学び、最大限に活かしていきたいです。この変化が良い方向に進むことを期待しています。
Hondaは日本とヨーロッパ拠点間の連携を強化するなど、このプロジェクトに非常に力を入れていますが、これはモチベーションを高めることにつながっていますか?
もちろんです。厳しい時期にあっても、Hondaがあらゆる努力を惜しまずに、全力でサポートに取り組んでくれるのを目の当たりにすると、確実に自信につながります。結局のところ、私たち全員が可能な限り早く勝利を掴むという同じ目標を持っています。そのため、チーム全員が同じ方向を向いており、その姿勢がやる気をさらに高めています。
2024年シーズンは進歩の年で、特に後半は安定した結果を残すことができました。2025年シーズンを好調なスタートで切るために、バイク開発のどの部分が鍵となるでしょうか?
はい、2024年の後半は良い流れでした。今年は新たにÖhlinsのサスペンションを採用するので、それに慣れて新しいベースセッティングを見つけることが最優先です。その上で、自分たちの強みを活かしながら、ドライブ力とアクセレーションという課題に取り組む必要があります。この部分が改善できれば、高いポテンシャルを持つエンジンをより効果的に活かせるようになると思います。
ルクオーナ選手とはライディングスタイルがかなり異なりますが、これはチームにとってメリットになりますか?
間違いなくメリットになります。スタイルこそ違いますが、バイクのベースセットアップはそれほど違いがありません。イケルが得意とする部分と私が得意とする部分がそれぞれ異なるので、それが有益です。それぞれの強みを活かして学び合い、互いに高め合うことができるのです。
これまでSBKで表彰台を獲得していますが、レース優勝を果たすことは、どのような意味を持ちますか?
それは夢のような瞬間になるでしょう。特に、この3シーズンで積み重ねてきた努力を考えると、なおさらです。正直言って、私たちにはこれまでに得た以上の成果を残せるだけの実力があったと思います。だからこそ、勝利はこれまでの努力に対する最高の報いとなるでしょうし、さらにモチベーションを高めることにもつながります。その瞬間を掴むために、全力でプッシュし続けていきます。
イケル・レクオーナ
オーストラリアでの開幕戦まであと数週間となりました。昨年はケガに悩まされましたが、フィジカル面での準備は順調ですか?
昨年はヘレスでのケガに続き、今年の初めにも小さなケガを負ってしまい、長い間ケガに苦しんできました。でも、オーストラリアには100%、少なくとも95%の状態で臨めると思っています。戦う準備は万全です!
フィジカル面は別として、かなり特徴的なコース特性を持つフィリップアイランドでの開幕戦に向けて、どのような見通しを持っていますか?また、長い冬季休暇を経て迎える最初のレースをどのように戦う予定ですか?
昨年学んだことの一つは、特定の期待を持って開幕戦に挑むのは必ずしも最良の方法ではないということです。今のところの計画としては、まずバイクに乗り、オーストラリア戦直前のテストをこなし、その後は週末のセッションを一つ一つ着実にこなしていくことです。フィリップアイランドのコースは大好きですが、これまであまりいい結果を残せていません。良いベースセッティングと、メンタル面、体力面ともに良いコンディションで現地入りし、どんな状況にも対応できるように準備を整えることが今回の計画です。
クルーチーフのトム・ヨジッチ氏と1年間一緒に仕事をしてきて、シーズンのスタートを良い形で切ることの重要性についてどう考えていますか?
メンタル的には、シーズンを良いスタートで切ることがとても重要です。昨年は精神的にも、もちろん肉体的にも苦戦しましたが、メンタルが強ければ、多少のケガがあってもフィジカル的には強さを発揮できると思います。逆に、メンタルが弱ると、すべてが厳しくなります。だからこそ、今年は最初からしっかりとしたスタートを切ることが、私にとって極めて重要なのです。
レクオーナ選手のライダーとしての長所の一つに、素早くリミットに到達する能力がありますが、その特性を活かすため、ライディングスタイルと人間的な面の両方で取り組んでいると話していましたね...
周りからは、サーキットでのリミットに素早く到達できると言われます。テストでは100周もする必要がなく、バイクに乗って4〜5周すれば、バイクの良し悪しやコースの特定のコーナーについて理解できます。これは私の持つ特性の一つですが、同時にマイナス面にもなり得ます。なぜなら、一度リミットに達してしまうと、そこからの改善が難しくなるからです。これは精神的にも課題となります。半日かけて作業しても、わずか0.1秒しかタイムが縮まらないこともあり、それを受け入れるのは必ずしも容易ではありません。昨年は自分のスタイルやパフォーマンスについて多くのことを学び、この特性をバイクの開発や自分の成長に活かせる長所として捉えるよう努めています。精神的にもより冷静になることを学びました。
2024年シーズンは、SBKで2回目の表彰台を獲得し、シーズン後半にはトップ5争いをすることも多かったですが、2025年の開幕戦から一貫してそのポジションで戦えるよう、チームとどのような準備を進めてきましたか?
昨シーズンの序盤は本当に厳しい状況でした。新しいバイク、新しいクルーチーフ、さらにケガも重なっていました。その後、夏頃からは、一度仕切り直して、シーズン序盤のことは忘れ、新しいバイクに以前のベースセットアップを適用したところ、うまく機能し始めたんです。クルーチーフと私は、お互いの理解を深めるために懸命に取り組みました。チーフは私のライディングスタイルをより理解し、私も自分のニーズをより効果的に伝えることができるようになり、その結果、大きく改善することができました。夏からシーズン終盤にかけて、重要なステップを踏むことができ、メンタル面でもフィジカル面でも大きな助けとなりました。バイクの上でより強さを感じ、プッシュできるようになりました。結果も出始め、ポディウムを獲得したときは信じられませんでした!13位から3位へのジャンプは、本当にクレイジーで素晴らしい結果でした。今年もこの勢いを維持していくことが目標です。
最後に、これはプライベートの話題ですが、最近ガールフレンドとの婚約を発表されましたね?
はい、数ヶ月前から考えていたことでした。彼女は私と同じバレンシア出身で、そこで出会いました。付き合い始めてすぐに、これまでの関係では感じたことのない特別な感情を抱きました。それから数年後、彼女にアンドラに一緒に引っ越さないかと提案し、もう2年近く一緒に暮らしています。彼女は私にとって大きな支えであり、毎日サポートしてくれます。彼女はアンドラやスポーツ、動物が大好きで…そして何より私のことが大好きなんです!(笑)プロポーズするときは、本当に緊張しました。MotoGPマシンに初めて乗ったときよりも緊張しましたよ!(笑)でも、彼女が「イエス」と言ってくれて、本当に幸せです!
ホセ・エスカメス
Honda HRCスーパーバイクチームのチームマネージャーとして1年が経ちましたが、プロフェッショナル、そして個人的な観点からこの経験をどのように評価されていますか?
プロフェッショナルとしては、このプロジェクトのような新たなチャレンジに取り組むことは常に学びが多く、成長の機会を得られることをとてもありがたく思っていますし、楽しんでいます。個人的な面では、もちろん非常に大変な1年でした。新しいことを始めるときは、常に細部まで気を配り、すべてがうまく機能するように特別な注意と努力を払う必要があります。
スーパーバイク世界選手権は予想していた通りでしたか?それとも、より大変でしたか?最大の課題は何でしょうか?
正直に言って、思っていた以上に厳しい環境でした。厳格なルールが設けられている選手権では、すべてを適応させることは容易ではありません。そのため、どこまでが許されるのか、何ができて何ができないのかを非常に注意深く見極める必要があります。そして最大の課題は、私だけでなくすべてのチームにとっても同じですが、勝利を掴むことです!私たちは常に高い期待を持っていますが、それを実現するのは想像以上に難しいことでした。表彰台に返り咲き、勝利を掴むこと、それが最大の課題です。
スーパーバイク世界選手権に参戦している他の日本メーカーは、ヨーロッパに拠点を置いてチーム運営を行っていますが、Hondaも同様の計画がありますか?
実は、このプロジェクトの開始当初からヨーロッパにロジスティクスの拠点を設けています。今年は、Honda Europeとの連携をさらに強化し、テストチームやバイク開発への関与を増やしていく予定です。これにより、開発プロセスを加速させ、目標達成までのスピードを向上させることを目指して、さらなる努力を重ねているところです。
2024年シーズン後半、ビエルゲとレクオーナは大きく安定感を増し、数回のトップ5フィニッシュとレクオーナに至っては表彰台獲得も果しました。これはチームワークとバイク開発の両面での成長を示していると思いますが、どのようにしてこの成果を実現し、また2025年にどのようにしてこの流れを継続していく計画ですか?
それを実現できたのは懸命な努力があったからです!それが唯一の方法です。確かに2024年は新しいバイクでスタートを切り、目指すポジションに到達するまでに予想以上に時間がかかってしまいました。しかし、努力を倍加させ、正しい方向性を見出せたことで、シーズン中盤から結果がついてきました。望んでいたよりも遅いタイミングではありましたが、重要なのは正しい道筋を見つけ、これから進むべき方向を理解できたことです。2025年も同じアプローチで進めていきます。要は懸命に努力を重ねることです。昨シーズン得た知識と、昨年以上に速くなれるという自信を持っています。
2024年にHRCは新型バイクのホモロゲーションを実施しましたが、2025年ではどのような新しい開発が期待できますか?
現時点では、それについて詳しく話すのはまだ早いですね。まずはテストを重ね、何が効果的で、何がそうでないのかを正しく理解する必要がありますが、それには時間がかかります。バイクの改善につながる可能性のあるアイデアはいくつかありますが、今は弱点の改善を最優先しながら、地道に作業を進めていきます。
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