「30回も世界チャンピオンになった人に教えられることは、あまりない」藤波貴久監督インタビュー
藤波貴久が、数々の栄光を収めたライダーとしてのキャリアにピリオドを打ち、Repsol Honda Teamの監督に就任してから4カ月経ちました。今シーズン最初の休みに、藤波監督にインタビューすることに成功。新たな役割、世界チャンピオンと今最も将来性のあるライダーの監督という立場について聞きました。
Repsol Honda Teamに関して、監督としてよりもライダーとしての関わりが長い藤波ですが、さまざまな展開がある中でXトライアルをリード。バルセロナでのボウ、マルセリの1-2フィニッシュなど、好調なシーズンの滑り出しに満足しています。
・・・新たな役割に慣れましたか?
– はい、チーム監督としてのポジションに満足しています。
・・・ライダーとして引退、新たに監督となったこの4カ月間はいかがでしたか?
– すでにチームのことはよく分かっています。25年もいますから、かなり理解しているつもりです。また、チャンピオンシップについても、必要なトレーニングについても、ライダーの思考パターンについても。すでに持っている知識は多いのですが、チーム全体の運営、特にロジスティクスは新たな経験です。連盟やチャンピオンシップのプロモーター、スポンサーとの連絡など、これは自分にとって新たな経験ですが、徐々に慣れてきました。
・・・今シーズン最初のチャンピオンシップ、X-Trialは既にスタートしましたが、ここまでの4戦の評価は?
– トニー・ボウが強いのは分かっていますが、より大きなエンジンを積んだニューマシンでのパフォーマンスは未知数でした。このバイクは昨年のプレシーズン中に私が乗り、改良を重ね、すばらしいバイクに仕上がりました。ここまでは、ボウは4戦4勝、8ラップ中1ラップしか落としていません。マルセリも、マドリードの結果を見れば、もっと伸びるポテンシャルがあることは明らかです。初戦は少しナーバスで、バルセロナではぎりぎり2ラウンド目まで届きませんでした。まだ学ぶことは多いので、できるだけ教えようと思います。X-Trialでのここまでのパフォーマンスは、ライダー両名ともいいレベルです。
・・・元ライダーとして、マルセリに対するアドバイスは、ボウに対するアドバイスより重要ではないでしょうか?
– 30回も世界チャンピオンになったライダーに何を教えられるでしょうか。すごく少ないと思います。ただ、マルセリにはアドバイスできます。彼はどんどん強くなって、世界チャンピオンになろうとしています。自分の26年の経験があれば、どうやって集中し、レースに立ち向かうかのメンタル面は教えられると思います。彼はテクニックがありますが、その他の面で少し改善する余地はあります。
・・・先ほどバイクの進化に触れましたが、藤波監督はボウとマルセリのニューエンジン、ニューマシンに乗ったことがあります。モンテッサは進化を続けていますか?
– まだ、最大の敵は2ストロークです。いくつかの面では2ストロークが4ストロークより優れていますので、一定の戦闘力を保つには進化し続けなければなりません。
・・・今年最初のチャンピオンシップはX-Trialですが、いくつかのルール変更についてご意見は?
– ライダー選定のやり方には反対です。昨年バルセロナで2位、Xトライアルで総合4位のマルセリが開幕戦に出場できないなんて、誰も理解していないと思います。それ以外は、昨年とあまり変わっていません。
・・・次のイベントは、マルセリが参戦する、アルテイショで行われるスペイントライアル選手権(CET)開幕戦です。マルセリは昨年、トップカテゴリーで初優勝、3位でシーズンを終えましたが、CETで何を期待していますか?
– 昨年CETとはどんなものかを見るために、マルセリとともに最終2戦に行きました。彼の結果は、優勝と3位でした。CETはインドア・アウトドアの選手権とかなり違います。フィジカル面もメンタル面も試され、セクションが多く、レース時間も長い。彼はすでに十分なレベルに達しているので、今年CETチャンピオンシップを争えたらいいと思います。
・・・あと1カ月ほどでTrialGPがスペインで始まります。アウトドアでは、チームに関してどんな計画がありますか?
– トニーはタイトル防衛します。信じています。マルセリは、本人の目標通りのトップ3入りを期待していて、どれかのイベントで優勝できれば、さらにベターです。理想を言えば、1-2フィニッシュが最高です。
・・・日本でのイベントが中止されましたが、代わりにスペインGPが予定されています。2022年のTrialGPカレンダーについてご意見は?
– 今年のカレンダーを見ると、ほぼすべてが2日間のイベントですので体力的に厳しく、8月には2戦もあって、おそらく猛暑の中で行われるので、フィットネス管理を完ぺきにする必要があります。昨年とはかなり違います。通常は日本戦がカレンダーに載っていますが、新型コロナウイルスの影響で行けず、スペイン戦もありませんでした。今年は、スペインでやっとTrialGPが開幕します。非常にうれしいことです。そこからは月に1~2トライアルのペースになりますから、とにかく集中し、体力的に準備します。
・・・日本人として、日本GPがないことをどう思いますか?もてぎではいつも、藤波監督を見にファンが集まりましたが、来年のもてぎはお客さんで埋められるでしょうか?
– この3年間、もてぎで戦えなかったことは残念です。また、引退した自分としては、日本の皆さまの前でパフォーマンスを見せることができないのは非常に残念です。しかし、マネージャーとして行きたいですし、日本人ライダーも参戦することに期待しています。また、Hondaのホームサーキットでもあるので、もてぎに行って戦えることは名誉だと感じています。