レッドブル・リンクでの2連戦から始まる後半戦にHonda勢が挑む
シーズン後半戦のスタートとなる第10戦スティリアGPが、8月6日(金)から8日(日)の3日間、オーストリアのレッドブル・リンクで開催されます。昨年に続き、今年も新型コロナウイルスの感染拡大の影響でカレンダーが大幅に変更となり、今年5月に中止が決まったフィンランドGPの代替として、スティリアGPの開催が決まりました。レッドブル・リンクでは、8月13日(金)から15日(日)までの3日間、オーストリアGPの開催が決まっており、レッドブル・リンクでは2年連続となる、2週連続開催となりました。
レッドブル・リンクは1969年に完成したサーキットで、当初はエステルライヒリンクという名称でしたが、97年にA1リンクとなり、2010年からはレッドブル・リンクへと改称されました。オーストリアで開催されるグランプリとしては、これが31回目。レッドブル・リンクという名称になってからは6年連続7回目となります。スティリアとは、レッドブル・リンクが位置する地方全体の呼び方で、スティリアGPとしてはこれが2回目の開催となります。
また、スティリアGP、そしてオーストリアGPと続く2連戦は、2019年シーズン終了以降、初めて満員の観客を迎えて行われます。世界的なパンデミックからの復興に向けて一歩を踏み出す重要な大会となります。
レッドブル・リンクは、ウイーンから南西約200kmのシュピールベルクにあり、オーストリアのほぼ中央に位置します。一周4.318kmのコースは、アップダウンに富んだハイスピードコースで、コーナー数は10(右7/左3)とシンプルなレイアウトです。現在のサーキットベストタイムは2019年のオーストリアGPでマルク・マルケス(Repsol Honda Team)がマークした1分23秒027(187.2km/h)でシーズンを通して最速サーキットとなっています。以下、フィリップアイランド(オーストラリア)とチャーン・インターナショナル・サーキット(タイ)が182km/h台、 シルバーストーン・サーキット(イギリス)とムジェロ・サーキット(イタリア)が179km/h台と続きます。
過去、Honda勢は、A1リンク時代のオーストリアGPで、1996年と97年に2年連続で、125cc、250cc、500ccの3クラスを制しています。最高峰クラスでは96年にアレックス・クリビーレ(99年のチャンピオン)、97年にミック・ドゥーハン(94年から98年までの5年連続チャンピオン)とMotoGPレジェンドに名前を連ねる両選手が優勝しました。
シーズン前半を終えて総合10位につけるマルク・マルケス(Repsol Honda Team)は、第3戦ポルトガルGPで復帰してから8戦目を迎えます。マルケスは、昨年7月のスペインGPで右腕上腕を骨折し、今年の4月までの9カ月間、レースから遠ざかっていました。
復帰してからのマルケスは、右腕の状態が完全ではなく、厳しい戦いを強いられていますが、6月の第8戦ドイツGPでは、復帰6戦目にして復帰後初優勝を達成しました。その後も、ドライコンディションでは依然として100%のパフォーマンスを発揮できていませんが、日を追うごとに右腕の状態は回復。1カ月間の夏休み期間中にマルケスは、昨年ケガをしてから初めてモトクロスのトレーニングを再開し、力強さが増していることを確認しました。
これまでマルケスは、レッドブル・リンクですばらしい優勝争いを何度も繰り広げてきました。アンドレア・ドヴィツィオーゾとは17年と19年、ホルヘ・ロレンソとは18年に最終ラップまでし烈な戦いを繰り広げファンを喜ばせましたが、まだ優勝のないサーキットの一つです。昨年はケガのためにレッドブル・リンクの2戦を欠場しており、2年ぶりとなるレッドブル・リンクでの戦いに注目です。
今季、Repsol Honda Teamに加入したポル・エスパルガロは、シーズン後半戦を楽しみにしています。シーズン前半を終えて、開幕戦カタールGP、第5戦フランスGPの8位が最高位で総合12位とフラストレーションを溜めるレースが続いています。その要因の一つは、コロナ禍の中で思うようにテストができない厳しいシーズンとなっているためですが、レースをこなす毎に着実にデータを蓄積し、本来の速さを発揮しています。予選のパフォーマンスでいいグリッドを得ることがリザルト向上の大きな鍵を握っています。過去2戦は予選でのパフォーマンスが向上しており、後半戦の活躍に注目されます。エスパルガロは、昨年のスティリアGPで3位になっており、2年連続スティリアGPでの表彰台とRepsol Honda Teamで初の表彰台獲得が期待されます。
中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)は、得意とするサーキットでシーズン後半戦を迎えます。昨年、レッドブル・リンクの2連戦では、オーストリアGPではトップから6.4秒差の6位、スティリアGPでは1.8秒差の7位でフィニッシュしています。2戦目となったスティリアGPでは、赤旗中断がなければ初表彰台、初優勝の可能性もありました。しかし、再スタートとなったレースでは新品タイヤのバックアップがなく、大接戦の中で7位に終わるという悔しいレースとなりました。昨シーズン、中上は2週連続開催のサーキットではすばらしい走りをみせました。シーズン前半を終えて中上は、スペインGPの4位を最高位に、マルケスに続く総合11位。初表彰台獲得を目標に挑むスティリアGP、そしてオーストリアGPの2連戦に大きな期待が寄せられます。
チームメートのアレックス・マルケス(LCR Honda CASTROL)は、シーズン前半を終えて総合15位。前半を終えて、ポルトガルGPの8位、フランスGPの6位とシングルフィニッシュがわずか2回と苦戦しています。最大の課題は新品タイヤのパフォーマンスをうまく発揮できず、いいグリッドを得られないこと。レースタイヤのペースがいいだけに、後半戦の最初の課題は、予選でいかにベストを尽くすかにかかっています。Moto2時代は、17年と19年に2位を獲得しています。昨シーズン、ルーキーながら2度の表彰台を獲得しているアレックス・マルケスが、今季初の表彰台獲得、初優勝に挑みます。