ドイツGPで今季初優勝を達成したマルク・マルケスが、その勢いで連戦となるオランダGPに挑む
第9戦オランダGPが、6月25日(金)~6月27日(日)までの3日間、オランダ北東部に位置するTTサーキット・アッセンで開催されます。昨年はコロナ禍の中で大会がキャンセルされ、今年は2年ぶりの大会開催となります。
オランダGPは、グランプリで最も長い歴史と伝統を誇り、今年で72度目を迎えます。グランプリの歴史において、第1回大会から同一サーキットでの連続開催はオランダGPのみ。大会がキャンセルされたのは、昨年の大会が初めてのことでした。
オランダGPの開催されるアッセンは世界でもっとも長い歴史と伝統を誇るサーキットです。1925年に「ダッチTT」がスタートし、49年にグランプリがスタートしました。当初は「ダッチTT」にグランプリが併催される形での開催でした。そして、オランダGPは伝統的に6月最終週の土曜日に決勝レースが行われてきましたが、16年の68回大会から日曜日に開催されることになりました。
毎年10万人前後の観客を集めるオランダGPですが、今年は観客数を大幅に制限しての開催となります。
長い歴史を誇るアッセンのコースレイアウトは、これまで数多の変遷をたどってきました。グランプリが開催された当初は、公道を使用する16.536kmのロングコースでしたが、その後はマシンやタイヤの進化に合わせ、何度もコースが改修されました。2006年には、コースの大幅な改修が実施され、レースファンにもっとも親しみのある伝統的な5.997kmのコースは4.555kmに短縮。コーナーの数も23から18へと少なくなりました。
5.997kmの旧コースは、高速コーナーが連続するリズム感あふれるレイアウトで、選手たちから愛されていました。現在の4.555kmのコースは、周回数を多くすることで、サーキットを訪れる観客やテレビの視聴者を楽しませようという、時代のニーズに合わせたものですが、旧コース同様、高速サーキットという特徴に変わりはありません。
フィリップアイランド(オーストラリアGP)、シルバーストーン(イギリスGP)、ムジェロ(イタリアGP)に匹敵するこの高速サーキットは、流れるような走りができることから選手たちから高い評価を得ています。また、パッシングポイントが多いことから、毎年、熱いバトルが繰り広げられます。
その一方で、アッセンは天候が変わりやすく、ときに選手たちを悩ませます。目まぐるしく変化する天候は“ダッチウェザー”と呼ばれ、天候に合わせたセットアップがリザルトに大きく影響するため、チームと選手には集中力が求められます。
19年の大会でHondaは、1959年6月にグランプリ参戦を開始してから60周目を迎えました。それを記念するセレモニーを行い、Hondaのヒーローであるミック・ドゥーハンさん、高橋国光さんが当時のGPマシンに乗ってデモンストレーションラップを行い、サーキットに集まったファンを喜ばせました。
前戦ドイツGPでは、ケガから復帰して6年目を迎えたマルク・マルケス(Repsol Honda Team)が、19年の最終戦バレンシアGP以来の優勝を果たし、世界中のレースファンを感動させました。もちろん、チームの士気もあがり、今大会も引き続き、優勝を目指す戦いとなります。
ケガから9か月の治療とリハビリ。そして第3戦ポルトガルGPで復帰してからの2カ月は、まだ完全ではない右腕との厳しい戦いとなっていました。しかし、左周りのドイツGPは右腕への負担が少なく、マルク・マルケスはザクセンリンクで11大会連続優勝というか快挙を成し遂げました。連戦となる今大会はヨーロッパでは一般的な右回りのコースとなり、再び、厳しい戦いが待ち受けています。しかし、復帰して初優勝を達成したマルク・マルケスは、2戦連続での表彰台と優勝を目指します。
マルク・マルケスはこれまで、アッセンで通算5勝を挙げています。125ccクラス時代の10年に初優勝を達成。Moto2クラスでは、11年、12年と2年連続で優勝し、MotoGPクラスでは、デビューした13年に2位、14年の大会ではフラッグ・トゥ・フラッグの難しいレースを制しました。15年は最終ラップの最終シケインでバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)と接触して2位。惜しくも優勝を逃しました。16年は”フラッグ・トゥ・フラッグとなり、大荒れのレースの中で2位フィニッシュし、チャンピオンシップで大きく前進しました。
17年も”フラッグ・トゥ・フラッグ”となりチャンピオンシップを優先したマルク・マルケスは、優勝争いに加わりながらも着実に走って3位でフィニッシュ。天候に恵まれた18年は、大集団となった優勝争いを制し14年以来の優勝を達成。19年は2位と最高峰クラスにデビューしてから7大会連続表彰台に立ち、125cc、Moto2時代を入れると10年連続で表彰台に立ってきました。2年ぶりの開催となった今年は、11大会連続表彰台を目指します。
チームメートのポル・エスパルガロ(Repsol Honda Team)は、前戦ドイツGPでは随所で光る走りを見せましたが決勝は10位と苦戦しました。今季は7戦を終えて、カタールGPとフランスGPの8位が最高位ですが、マルク・マルケスが今季初優勝を達成したことでRC213Vのセットアップも大きく進むことが予想されます。過去、アッセンでは、125cc時代の2010年に3位、13年にはHondaエンジンを搭載したMoto2クラスで優勝しました。MotoGPクラスでは16年の4位が最高位ですが、今年はHonda移籍初表彰台、初優勝に挑みます。
中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)は、Moto2時代の16年に、現在MotoGPクラスで戦うヨハン・ザルコ(ドゥカティ)とフランコ・モルビデリ(ヤマハ)を破り初優勝を達成しました。今年は第4戦スペインGPの4位が最高位。初表彰台獲得に向けて大きく前進しましたが、ここ数戦は、不運なレースや転倒、タイヤ選択ミスなどでトップ10を逃しています。19年大会は大接戦となった予選で8番手。決勝も好走を見せましたが後続者の転倒に巻き込まれリタイアに終わっています。今年は得意のサーキットでベストリザルトに挑みます。
前戦ドイツGPで今季初めてダイレクトでのQ2進出を果たしたアレックス・マルケス(LCR Honda CASTROL)は、決勝では他者と接触してともに転倒リタイアに終わりました。今大会はその雪辱に挑みます。これまでアッセンではMoto3クラスでタイトルを獲得した14年に優勝、Moto2クラスでは18年に3位表彰台に立っています。MotoGPクラスでは、RC213Vを初めて走らせるサーキットとなりますが、前戦ドイツGPでセットアップが大きく前進、フリー走行、予選で好位置を獲得し、決勝ではフランスGPの6位以上を目指します。