Honda勢4人の中でもっとも速かったのは、HRCのテストライダーを務めるステファン・ブラドルで、公式テスト前日に行われたテストライダー、ルーキーライダーによるシェイクダウンテストから走行しており、Honda勢の中では唯一、3日間の走行となりました。昨年は負傷のために欠場したマルク・マルケス(Repsol Honda Team)の代役として11戦に出場しました。最終戦ポルトガルGPでは7位でフィニッシュするなど、RC213Vの開発ライダーとしてマルク・マルケスのタイトル獲得に大きく貢献してきましたが、今回のテストでもHRCに貴重なデータを多く提供しました。
ドイツ人で31歳のブラドルは、2011年のMoto2チャンピオンでMotoGPクラスにもHondaチームから出場するなど経験豊富なライダーです。今回のテストでは、ベストタイム、そして連続ラップでも、レギュラーライダー以上のすばらしい走りを見せ、2日間で合計115ラップをこなし、トップから0.270秒差の総合5番手でした。
これまで最高峰クラスで6回のタイトルを獲得したマルク・マルケスは、昨年7月のスペインGPで右腕を負傷、現在、復帰に向けてリハビリを続けています。開幕戦カタールGPから復帰を希望していますが、回復状況を見ながらドクターのアドバイスを受けて判断することになります。
昨年は新型コロナウイルスの感染拡大で約4か月間、シーズンは中断。全20戦を予定していましたが、15戦(MotoGPクラスは14戦)でシーズンは終了しました。今年も新型コロナウイルスの影響を受けるシーズンになっていますが、21年シーズンは、MotoGPクラスに参戦する6メーカーの合意でエンジン開発を凍結しました。そのため、2021年型RC213Vでテストを開始した4選手は、主に車体、電子制御などのテストに集中しました。
今季、Repsol Honda Teamに加入したポル・エスパルガロは、スペイン出身の29歳。Moto3、Moto2クラスとマルク・マルケスとしのぎを削ってきたライバルです。と同時に、Hondaのマシンに乗ることを「夢見てきた」と語るだけに、初日、2日目とテスト開始の午後2時過ぎにはコースイン。午後9時のテスト終了まで、RC213Vの初ライドを満喫しました。注目を集めたポル・エスパルガロですが、初ライドとは思えない走りを随所で見せ、次回10日から12日まで行われる今季2回目の本格的なテストに向けて大きな成果を得ることに成功しました。ポル・エスパルガロは2日間で130ラップ。トップから0.733秒差で総合12番手。初ライドとしては上々のスタートとなりました。
MotoGPクラスで4年目を迎える中上貴晶は、ポル・エスパルガロより0.017秒遅れ。今季からチームメートになったアレックス・マルケスよりは、わずかに速く、ポル・エスパルガロ、中上貴晶、アレックス・マルケスの順で僅差で並びました。今年29歳になった中上は、ロサイルのような中高速コーナーが連続するサーキットを得意としますが、昨年は2019年モデルのRC213Vに乗っていたこともあり、今回のテストでは、21年型RC213Vのフィーリングに慣れることに重点を置きました。2日目のテストでは、路面温度が下がる夕方に転倒を喫しましたが、予定していたメニューをすべて消化しました。2日間で118ラップをこなした中上は、10日から始まる今季2回目の公式テストに向けて多くのデータを蓄積しました。
MotoGPクラスで2年目を迎える24歳のアレックス・マルケスは、Repsol Honda TeamからLCR Honda CASTROLにチームを変わりました。昨年、MotoGPクラスでルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得したマルケス弟は、初日、2日目と2日連続で転倒しましたが、今回のテストでは、限界を探ることが一つの目標であり、転倒による影響はありませんでした。転倒したことでセットアップの方向性をしっかり見極めることに成功。2日間で101ラップを消化。次回のテストではタイム短縮とポジションアップが期待されます。