MotoGP

アジアから世界へ 出光カラーのマシンを駆るライダーたち

ロードレース世界選手権(MotoGP™)の2024シーズンがついにカタールで開幕した。 アジア人ライダー育成プロジェクトへのサポートが開始され12年目を迎える出光興産は、今年もMotoGP™の3クラスおよびIdemitsu Asia Talent Cupのスポンサード。今年もアポロマークをモチーフにした出光カラーのマシンが若いアジア人ライダーの夢の実現を後押しする。

アジアから世界へ 出光カラーのマシンを駆るライダーたち

出光興産の企業ロゴのモチーフはギリシャ・ローマ神話に登場する太陽神アポロ。「尽きることのないエネルギーに満ちあふれ、高い志と未来を見通すまなざしを持つ者」と言われ、風になびく髪と横顔がトレードマークである。初めてグランプリの舞台に登場した時、欧州でのアポロマークの認知度は必ずしも高くはなかった。しかし参戦から12年、今やMotoGP™やアジアのレースシーンを代表するオイルメーカーの一つとして知られるようになった。



MotoGP™クラスでは、中上貴晶が「IDEMITSU Honda LCR」から参戦。今年7年目を迎える中上は「昨年はMotoGP™で最も厳しいシーズンだった。思うように走れず、Honda勢全体が苦戦したが、2024年型RC213Vには大きな進化を感じた。トップグループと戦うにはさらに熟成が必要だが、ポテンシャルは高いのでこれからの進化が楽しみ。今年は強いHonda、強い中上貴晶をみせたい」と意気込んでいる。 

今年はマレーシアのセパンと、開幕戦の舞台となったカタールのルサイルで行われたウインターテストから始まった。今年投入されたニューマシンは昨年仕様に比べ大きな進化を遂げた。マシンのバランスもよくなり、「加速と最高速につながった」と中上は手応えを語った。



中上は14年にHondaのアジア人ライダー育成チームである「IDEMITSU Honda Team Asia」からMoto2クラスに参戦。17年までの4年間でランキング6位を最高に、2勝を含む9回の表彰台に立った。その活躍が認められ、18年よりLCR Honda IDEMITSUチームからMotoGP™のチャレンジを開始。表彰台には届かずとも、4位を3回、ポールポジションも1回獲得し、世界レベルの走りをみせてきた。中上は中高速コーナーを得意とし、開幕戦の舞台となるカタール、アメリカのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)、オランダのアッセン、イギリスのシルバーストーン、オーストリアのレッドブル・リンクなどで真価を発揮。ハイスピードコースではライバルも一目置く速さを披露してきた。最も得意とするのは中速コーナーが連続するスペインのヘレス・サーキットで、今年もベストリザルトである表彰台フィニッシュ、そして初優勝を目指す。

「今年7年目のシーズンを迎えられるのは、出光をはじめとするスポンサー、Honda、そしてファンのおかげ。今年こそ、これまで応援してくれている人たちに喜んでもらえるようなシーズンにしたい」

まずは、自身が得意とする開幕戦カタールGP。24年型RC213Vの仕上がりを確認する上でも重要なレースとなるが、シーズンのスタートダッシュを決めて「いい流れに乗りたい」と心機一転のシーズンに闘志を燃やしている。


Moto2クラスとMoto3クラスはIDEMITSU Honda Team Asia(Moto2クラス)/Honda Team Asia(Moto3クラス)として、2009年に250㏄クラス(現Moto2クラス)でタイトルを獲得した青山博一が引き続きチームを率いる。同チームは世界の舞台で戦えるアジア人ライダーを発掘・育成する取り組みの一環として13年にMoto2クラスに参戦し、16年にMoto3クラスにも参入。



Moto2クラスは今季参戦6年目のソムキアット・チャントラ=タイ=と、Moto3クラスから昇格したマリオ・アジ=インドネシア=の2人体制で挑む。22年にタイ人として初めてMotoGP™(Moto2クラス)で優勝したチャントラは、昨年日本GPで通算2勝目を挙げ、大きな注目を集めた。

「シーズンを追うごとに自分の成長を感じる。今年は6年目。自分にとってはとても重要な年になる」と自他ともに期待は膨らむ。

ウインターテストでは、スペインのヘレスとポルトガルのアルガルベでプライベートテストを実施。その後、ヘレスで公式テストに挑んだが、大きな成長を感じさせた。今年はチーフメカニックにアルベルト・イオッティが就任。ペドロ・アコスタ(現MotoGP™クラス参戦)とともにMoto3クラス、Moto2クラスのタイトルを獲得した名手で、以前には故・富沢祥也とも仕事をしていたことでも知られ、チャントラの高い才能をさらに引き出してくれることが期待される。

また、アジはMoto3クラスの車体に対し体のサイズが大きく、早くからMoto2クラスへの昇格を希望していた。 その願いがかない、今までになくモチベーションが高まっている。

「ついにMoto2クラスで走れる。本当にすばらしいことで、こんなに興奮したのは初めてだ。このクラスに早く適応し、1つでも上のポジションを狙いたい」と気合を入れている。

昨年までIDEMITSU Honda Team Asiaに在籍した小椋藍は引き続きHRCのスポンサードを受けながらMT Helmets – MSIチームから参戦、チャンピオンを目指す。



Moto3クラスは、3年目のシーズンを迎える古里太陽がHonda勢のエースとして活躍が期待される。21年にはIdemitsu Asia Talent Cup で史上初の全戦全勝を記録してチャンピオンに輝き、同年のルーキーズカップでもデビュー戦で優勝と非凡な才能をみせた。22年に16歳でMoto3クラスに参戦。2年目の昨年のタイGPでは優勝争いに加わって2位、初の表彰台を獲得した。



ウインターテストでも順調な仕上がりをみせた古里。

「3年目なので、これまで以上に結果を残したい。今年はマシンが新型になり、タイヤもピレリに変わる。初めて経験することも多いので、オフのテストではそうしたことに慣れることに重点を置いた。まずは初優勝を目指し、全力を尽くしたい」と語った。

チームメートには、今季MotoGPステップアップのタットチャコーン・ブーシュリ=タイ=が加わる。

「こうしたチャンスをもらえてすごくうれしく、そして誇りに思う。今年は初めてのシーズンなので、レースごとに向上できるようにベストを尽くしたい」とデビュー戦を待ちきれない様子だった。



アジアから世界に通用するライダーを育てる目的で、MotoGP™を運営統括するドルナスポーツが2014年に共同でスタートしたのが「Asia Talent Cup」。17年からは、出光がタイトルスポンサーになり「Idemitsu Asia Talent Cup」として開催されている。マシンはHRC製NSF250Rのワンメイク。

これまで多くの選手が、この育成シリーズに参戦。今季、Moto2クラスとMoto3クラスで戦うHonda Team Asiaの4人はもちろんのこと、世界の舞台で活躍する小椋藍、佐々木歩夢、山中琉聖、デニス・オンジュら多くの有力ライダーを輩出してきた。

開催11年目を迎える今年は8カ国から20人のライダーが参加、6戦12レースのシリーズ戦に挑む。日本からは荻原羚大(りょうた)、三谷然(ぜん)、高平理智、池上聖竜、竹本倫太郎が挑戦する。



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