全日本ロードレース選手権

全日本ロードレース選手権 2023年シーズンプレビュー

国内最速のライダーを決める、全日本ロードレース選手権の57年目のシーズンが4月1日、モビリティリゾートもてぎ(栃木県)で開幕する。今季は全8戦で行われ、JSB1000を最高峰クラスとし、ST1000クラス、ST600クラス、J-GP3クラスの4クラスに分かれる。モビリティリゾートもてぎ、鈴鹿サーキット(三重県)、スポーツランドSUGO(宮城県)、岡山国際サーキット、オートポリス(大分県)、筑波サーキット(茨城県、J-GP3クラスのみ)と、全国のサーキットを転戦していく。

全日本ロードレース選手権 2023年シーズンプレビュー

JSB1000:苦戦を強いられた昨シーズンからの巻き返し。ベテランの復活にも期待

全日本選手権の最高峰JSB1000クラスは、最新の市販1000ccスーパースポーツバイクをベースに、各メーカー、チームがレース用に改造を施したマシンで戦われている。

今季からはJSB1000クラスのみ、実質的なCO2排出量の削減に向け、非化石原料100%のカーボンニュートラル燃料の採用が決定。ハルターマン・カーレス・ジャパン社がオフィシャルサプライヤーとなり、それに伴ってクラス名称も「JSB1000 Supported by ETS Racing Fuels」に変更された。2レース制の大会も多く、今季は全7大会12戦が予定されている。

CBR1000RR-R FIREBLADEを駆るHonda勢は、今季の年間エントリー24台のうち9台を占める最大勢力だが、昨季はライバルたちの前に苦戦を強いられた。ランキング最上位はAstemo Honda Dream SI Racingの作本輝介で4位。JSB1000参戦1年目ながらHonda勢最上位となった作本のスピードには定評があり、今季はさらに上位を目指していく。


Honda勢最上位となった作本。今季はゼッケン4をつける
Honda勢最上位となった作本。今季はゼッケン4をつける

作本のチームメートには、英国スーパーバイク選手権(BSB)に2年間参戦し、武者修行を終えた水野涼が加わった。2015年のJ-GP3、2017年のJ-GP2でチャンピオンを獲得してきた逸材は「海外参戦で学んだすべてをぶつけたい」と、3年ぶりの全日本で成長した姿をみせる意気込みだ。水野の加入で、Honda勢トップランカーの作本にとっては、強力なチームメートに対し負けられない戦いを迎えることとなる。

TOHO Racingの清成龍一は、昨年は開幕前に負傷し欠場が続いていたが、夏の鈴鹿8耐から復帰。徐々に速さを取り戻し、全日本最終戦鈴鹿では3レース中2レースで3位表彰台に登り、復調を印象づけた。ランキングは10位となったが、BSBで3度のタイトル獲得、鈴鹿8耐では歴代2位タイの4勝と、その実力はロードレースファンなら誰もが知るところ。「勝ちたい」と勝利への渇望を口にしており、2018年最終戦以来の勝利を狙う。


22年最終戦鈴鹿で表彰台に上がった清成
22年最終戦鈴鹿で表彰台に上がった清成

SDG Honda Racingの名越哲平は、2019年J-GP2チャンピオンであり、アジアロードレース選手権(ARRC)やロードレース世界選手権Moto2への代役参戦など、海外経験が豊富で、確実な成長を示してきた。昨年はケガに苦しみ、2大会のみの出場にとどまったが「今年のためにケガの治療に専念した。その思いをぶつけたい」と今季に賭ける思いは強い。


ST1000:V3を狙う渡辺、雪辱を期する國峰。実績十分の「ダブル高橋」が競争を激化させる

2020年にスタートしたST1000クラスは、JSB1000クラス同様に国内外の最新リッタースーパースポーツバイクによって争われる。JSB1000クラスとの違いは改造範囲が大きく制限されていることで、より市販状態に近いマシンとなる。200馬力を超えるハイパワーを持っていながら、JSB1000より車両重量が重く、ブレーキも市販車のキャリパーを使うため、より高度なライディングスキルが問われるクラスとなっている。年間エントリー25台のうち、CBR1000RR-R FIREBLADEを駆るのは8台とこちらも最多。クラス創設以来、Honda勢が3年連続でタイトルを獲得しており、20年、22年はトップ3を独占している。

Honda勢の筆頭は、現在2連覇中の渡辺一馬(Astemo Honda Dream SI Racing)。昨年は圧倒的速さを示し、後半戦で4連勝を飾っている。

昨季ランキング2位となったTOHO Racingの國峰啄磨は、第2戦SUGOで初優勝を飾り、以降トップ争いの常連に。渡辺と同点に並び迎えた最終戦で惜しくも2位となった悔しさをばねに「今年こそタイトルを」と強い思いを持っている。昨年はチームメートの清成の代役としてJSB1000にも参戦してスキルを磨き、大きく成長したライダーだ。


22年最終戦鈴鹿でタイトルを懸けたバトルを繰り広げた渡辺(#1)と國峰(#29)
22年最終戦鈴鹿でタイトルを懸けたバトルを繰り広げた渡辺(#1)と國峰(#29)

ST1000初代チャンピオンの日本郵便 Honda Dream TPの高橋裕紀は昨季ランキング3位。その高橋裕紀のチームメートとして、JSB1000の水野同様にBSBで2年間戦った高橋巧が加入する。高橋巧は17年のJSB1000チャンピオンであり、鈴鹿8耐でも4勝を挙げた実績の持ち主だ。高橋巧は「成長した姿を見せ、チームメートの高橋裕紀さんとワンツーを決めたい」と目標を語っている。

昨年のST600チャンピオンに輝いた荒川晃大と、同8位の國井勇輝はそれぞれステップアップし、CBR1000RR-R FIREBLADEを駆って戦うこととなる。

全5大会6レースで争われるST1000クラスは、高橋巧の参戦が大きな話題であり、三つ巴のタイトル争いを演じた渡辺、國峰、高橋裕紀の間に加わってくるのは必至。また、荒川、國井といった若手のステップアップ組が、どこまでの走りを見せるのかも見どころとなる。


22年まで英国スーパーバイク選手権を戦った高橋巧
22年まで英国スーパーバイク選手権を戦った高橋巧

ST600:ストリート仕様にもっとも近いクラス。世界を知るベテランに、世界を目指す若手が挑む

2001年に創設されたクラスで、主に4気筒600ccの市販スーパースポーツバイクで争われており、HondaはCBR600RRをこのクラスに供給している。改造範囲は狭く、タイヤも溝付きのスポーツタイヤを使っているため、ストリートを走るバイクに一番近いクラスとも言える。

昨年のチャンピオンの荒川がST1000クラスへとステップアップしたことで、ゼッケン1不在の戦いとなるST600。今季は5大会6レースでタイトルが争われる。タイトル候補筆頭に挙げられるのは、昨季ランキング2位の小山知良(日本郵便 Honda Dream TP)。小山は2019年タイトルを獲得、過去2年はランキング2位と、常にチャンピオン争いを繰り広げているライダーだ。過去にはWGP(125ccクラス)参戦のキャリアがあり、その実力は折り紙付き。今季もタイトル争いの中心的存在となるだろう。


昨季ランキング2位の小山。今年もゼッケンは2となる
昨季ランキング2位の小山。今年もゼッケンは2となる

羽田太河は、HondaのMotoGP開発ライダーでもある長島哲太監督のチーム、TN45 with MotoUP Racingから引き続きエントリー。昨年は後半戦3戦をMoto2代役参戦のため欠場しながらも、3戦で優勝と2位2回を獲得し、ランキング5位。今季はフル参戦でタイトル獲得を目指す。


世界での経験豊富な長島監督(写真右)のもとでタイトルを狙う羽田
世界での経験豊富な長島監督(写真右)のもとでタイトルを狙う羽田

J-GP3:V3を狙う尾野に新鋭ライダーが待ったをかけるか。女性ライダーの活躍にも注目

4ストローク250cc単気筒のレース専用マシンで争われているJ-GP3クラス。参戦しているマシンの大半を、Hondaがレース専用に市販しているNSF250Rが占めている。

P.MU 7C GALESPEEDの尾野弘樹は世界選手権Moto3の参戦を経験した後、21年にJ-GP3参戦を開始しいきなりタイトルを獲得。22年も6戦中3勝を挙げV2を達成している。

その尾野に昨年、一矢報いたのはTeam Plusoneの木内尚汰。木内は開幕戦で勝利し、シーズンを通して上位争いを繰り広げてランキング3位となった。昨季、僅差のバトルで尾野に敗れることが多かった雪辱を果たせるか注目だ。


22年に幾度となくバトルを繰り広げた尾野(#1)と木内(#7)
22年に幾度となくバトルを繰り広げた尾野(#1)と木内(#7)

4レースのみの出場ながらランキング7位に入った若松怜は、今季から日本郵便 Honda Dream TPに加入しフル参戦。イデミツ・アジア・タレントカップでも経験を積んだ17歳が上位争いへ食い込んでいけるか注目される。若松のチームメートである岡崎静夏、尾野のチームメートの桐石瑠加、2人の女性ライダーの戦いからも目が離せない。

尾野は「昨年はレベルがアップしたことを実感した。V3は簡単ではないが、もちろん目指していく」と決意を新たにしている。尾野のV3か、それを阻止するライバルが現れるのか。全6戦の戦いがいよいよ始まる。


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