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Japanese FIA F4 2022
Round 3

HFDPドライバーズ・ドキュメンタリー FIA-F4 Vol.3 ~三井優介~

jp Fuji Speedway

昨年、SRS-F(現HRS/ホンダ・レーシングスクール)を受講した三井優介は、今年のFIA-F4日本選手権にHFDP(ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト)からデビューすると、その初戦──開幕戦でいきなり優勝を飾り、その後3戦連続で2位に入賞。ルーキーながらポイントリーダーとして、8月第1週に富士スピードウェイで開催された第3大会(第5戦および第6戦)を迎えた。

HFDPドライバーズ・ドキュメンタリー FIA-F4 Vol.3 ~三井優介~

一躍注目のルーキーとなった三井ではあるが、本来、彼は今シーズンのHFDPにシートを得られず、FIA-F4のスターティンググリッドには並んでいなかったかもしれないという、きわどい橋を渡っていた。

「父親がモータースポーツ好きで、子どもの頃からさまざまなモータースポーツイベントに連れて行ってもらっていました。そのうち自分も興味を持つようになり『今度は自分でやってみるか』と、父親に勧められてレーシングカートをやるようになりました。その後、SRS-F(現HRS)の存在を知って、軽い気持ちで体験試乗会に参加して走ったら楽しかった。父親の後押しもあって本格的に入校することになりました」

SRS-Fに入校した三井は、受講するからにはスカラシップ獲得を目指そうと、高校卒業後に通い始めた自動車専門学校を休学。レーシングガレージの門を叩き、そこで働きながらフォーミュラカーのドライビングに加え、メカニズムまでをも学ぶ時間を送っている。

「僕らの世代は、コロナ禍の影響でSRS入校が1年延期になっているんです。もし延期になっていなければ、カートをやったままスクールに入るはずだったのですが、1年空いてしまったので、それならばとフォーミュラをきちんと学べる環境を探しました。スクールに入ってスカラシップを獲って、さらに上へステップアップしていくためには、自分の人生の未来図を明確に描いて、真剣に取り組まないと生き残れないと思っての決断でした」



しかし、スクールでの三井は必ずしも思い通りの成績を挙げることはできなかった。
「いつも順位的には3、4番手のところで『自分の努力でもう少し何かを変えないとトップには立てない』と感じていました。だからこそ、スクールの外でもフォーミュラカーで練習を重ねていたんです。そうした練習を重ねていくと運転技術の向上だけでなく、自信もついてきます。だから、『きちんと自分の走りができればスカラシップの枠には入れるかな』とは思っていました」

実際、三井は6名のスカラシップ候補者に勝ち残り、最終スカラシップ選考会に出走した。しかし最後の最後、11月にスカラシップ獲得者として発表されたのは、主席の荒尾創大と次席の野村勇斗であった。三井は敗れてしまったのだ。
「もちろん悔しかったです。でもスカラシップに選ばれた選手よりも自分の方が遅いことは自覚できていましたし、それは自分で認めて、次にどういうアプローチをしようかと頭を切り換えました」

三井は、自力で2022年度のFIA-F4日本選手権になんとか出走しようと考えていたと言う。
「そこである程度結果を出せたら、SRSの卒業生として何かの形で拾われることがあるかもしれないというアドバイスもありました。スポンサーにも協力をいただけましたし、親も『ここまでやったんだから、やれるところまでやってみろ』と言ってくれていました」

しかし、三井の思いをよそに、事態は異なる方向へ動いた。荒尾創大と野村勇斗がレッドブルジュニアの一員としてフランスF4へ旅立ったため、FIA-F4日本選手権を戦うHFDPの補充要員が必要になっていたのだ。
年が明けた1月、自力でFIA-F4に参戦するため準備を始めていた三井のもとに一本の電話がかかってきた。「HFDPの一員としてFIA-F4に出走する気はあるか」という打診だった。もちろん三井がこのチャンスを逃すわけはなかった。

「SRSでスカラシップに選ばれなかったことに対しては、自分のドライバーとしての能力が否定されてしまったように感じていました。でも、HFDPで乗れるという報せを受けて、『結果には出ないところでも自分の能力を見てくれていた関係者がいて、認めてもらえたんだ』と自信を取り戻すことができました。それなら『参加初年度からちゃんと結果を出そう』『今の自分にできることをとことん突き詰めて、シリーズチャンピオンを目指そう』と目標を決めました」



こうして三井は2022年度のFIA-F4日本選手権にHFDPのドライバーとして出走、なんとデビュー戦で優勝を飾ることになった。このレースではスタート直後に波乱があり「三井の優勝は、単に幸運に助けられたもの」という見方も少なくはなかった。しかし、三井は続く第2戦でも同僚の小出峻に続く2位に入賞、さらに第2大会(第3戦および第4戦)でも2レース連続で2位入賞を果たして、なんとシリーズポイントランキングトップに立った。

当初「幸運に恵まれたルーキー」と言われた三井は、いまや「将来有望な実力派の若手」として認められる存在となった。しかし、富士スピードウェイで行われた第3大会(第5戦および第6戦)では2レースとも小出の後塵を拝し、3位、2位に終わり、ポイントランキングトップの座を小出に譲ることとなった。それでも開幕以来6戦連続で表彰台に上がり、3番手を大きく引き離してのランキング2番手である。



富士大会のレースを終えた三井は言う。

「経験を積んだ小出選手にはまだ後れを取っていて、ランキング2番手ではあるけれど、差がありすぎて自分には何が足りないんだろうと悩んでばかりです。でも、経験の少なさを言い訳にはしたくないです。経験がなくても、自分で何かを見つけてつかめば速く走れるようになるはず。いま負けているのは事実なので、そこを地道に詰めていくしかありません。もちろんできるだけ早く詰めないとシリーズは終わってしまいますが、焦ってもいけない。きちんと1レースごとに何かを吸収して、徐々に追いついて、最終的に抜くという形が取れればいいと思っています」

崖っぷちでもたらされたチャンスを、三井はしっかりと掴み、着実に自分の能力を引き延ばしていこうとしている。今季のFIA-F4は、いよいよシーズン後半戦に突入する。


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