Formula 1

特別デザインのマシンに込めた思い―山本雅史MDに聞く

今週末のトルコGP、日本GPが行われる予定だったレースウイークに、Red Bull Racing、Scuderia AlphaTauriともに、特別なデザインのマシンを走らせます。実現に至るまでの経緯を、山本雅史マネージングディレクターに聞きました。

特別デザインのマシンに込めた思い―山本雅史MDに聞く

鈴鹿サーキットで日本GPが開催される予定だった今週末は、代わりにイスタンブールでトルコGPが行われます。コロナ禍の影響により、2年連続で中止が決まった日本GPに、Honda F1のメンバーも無念の思いをにじませています。

もちろん、安全が何よりも優先されることは当然ですが、HondaとしてはF1プロジェクトの最終年となっただけに、ホームの大観衆を前にレースをしたかったという思いがどうしても消えません。

その願いは叶わないままに今週末を迎えてしまいましたが、トルコでは、Red Bull Racing HondaのRB16Bが1戦限りの日本仕様カラーで参戦。Scuderia AlphaTauri Hondaも普段と少し異なる姿のマシンを用意してくれました。

Honda F1の山本雅史マネージングディレクターに経緯を聞きました。

「Red Bullから鈴鹿のために何か特別なことをしようとHondaに持ち掛けてくれました。そこで、Honda初のF1優勝マシンであるRA272をインスパイアした、特別カラーのレーシングスーツというアイデアが出てきました」

「過去に、Hondaドライバー向けに白地に赤いラインの入ったレーシングスーツを制作したことがあり、ジェンソン・バトンがHonda Racing THANKS DAYで着てくれました。それもあって、当初は鈴鹿で特別なスーツを用意するアイデアだったんです」



「議論を重ねる中で、『マシンのカラーリングも変えてはどうだろう?』と提案しました。RA272をモチーフに、デザインは一緒に考えました。Red Bullがベースのデザインを作ってくれて、僕らからは日の丸をイメージした赤丸を入れられないかなど、細かい部分を提示していきました」

Red Bullは、FIAとFormula 1から、このカラーリングでの走行許可を得なければなりませんでした。当初の予定通りにこのマシンで鈴鹿を走ることができれば「最高だったね」と山本MDは言いますが、どのサーキットになっても、このカラーリングが発するメッセージは変わりません。

「少し残念な気持ちはありますが、Hondaとしては、Red Bullと一緒にこういう取り組みができたことがとてもうれしいですね。実現に向けて尽力してくれたRed Bullには本当に感謝しています」

「ファンの皆さんにはきっと喜んでもらえると思います。Red BullとHondaがワンチームになって同じ目標を目指しているという姿が見せられることは、誇らしい気分です。こうして、世界中のファンの皆さんにお見せできるものがあるというのも、誇りに思います」

「個人的には、Hondaのみんなが喜んでくれているのもうれしいですね。我々がワンチームなんだということを示すのは大切ですから」



トルコでこうしたメッセージを発信するのは、Red Bullだけではありません。Scuderia AlphaTauriも、日本語で「ありがとう」と書かれたリアウイングで戦います。

「この『ありがとう』は、もちろんRed Bullファミリーである、クリスチャン(ホーナー代表)、ヘルムート(マルコ氏)、フランツ(トスト代表)、そして4人のドライバーにも向けたものですが、一番伝えたいのは、ずっと応援し続けてくれたファンの皆さんです。僕らにとっては今年が最後の一年となりますが、どこかでこうしたメッセージを伝える機会が欲しいと思っていました」

もしイスタンブールで勝利を収められれば、今回のスペシャルデザインは「レースウィニングマシン」として、もう一つ特別な意味合いが増えるはずです。

今回のカラーリングは、山本MDにとっては過去のどのデザインよりもお気に入りとなっているようですが、それ以上に、Red BullとHondaの絆の象徴とも言えるこのマシンが、Hondaファンや従業員に長く愛されることを望んでいます。

「いつか、青山にこのマシンをチャンピオン獲得マシンとして展示できれば、本当に特別な瞬間になると思います。その前に、ファンの皆さんに飾ってもらえるように、ミニカーを発注済みです。僕は準備がいいので、1/18と1/43の2種類を発注しました(笑)」

金曜日のフリー走行で、このマシンがコースへ出ていく瞬間は、素晴らしいものになるはずです。しかし、その瞬間からは、メルセデスとの厳しいチャンピオンシップ争いへ目を向けなければなりません。

今季は非常にドラマティックな戦いになっており、山本MDはまだ紆余曲折があるとにらんでいます。後から振り返ったときに、この特別カラーが歴史に残るような役割を果たしてくれれば理想ですが、最後までファンの皆さんやRed Bullに感謝を示し続けることが大切です。



「今このポジションにいることはすごくうれしいですし、誇らしいです。ただ、ロシアでもそうだったように、メルセデスが強いコースがありますし、その逆でRed Bullが有利なところもあるので、一つひとつのレースに集中し、正しい戦い方ができれば、チャンピオンシップを手にすることができると思います」


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