【2021シーズン総集編】歴史に残るタイトル争い フェルスタッペンが自身初&Honda勢30年ぶりのドライバーズチャンピオンに輝く
2021年のF1世界選手権は、コロナ禍の影響でカレンダーの変更や同一サーキットでの連戦などがありながらも、過去最多の全22戦が行われた。2021年シーズン限りでパワーユニットサプライヤーとしての参戦終了を発表していたHondaは、当初2022年シーズンからと予定していた新骨格のパワーユニット「RA621H」を前倒しで投入。Red Bull Racing HondaとScuderia AlphaTauri Hondaの2チーム4台とともに、ラストシーズンを戦った。
角田裕毅がF1デビュー 開幕戦で9位入賞
Red Bull Racing Hondaは絶対的エース、マックス・フェルスタッペンのチームメートに、レーシングポイント(現アストンマーティン)からセルジオ・ペレスを迎え入れた。Scuderia AlphaTauri Hondaは前年のイタリアGPでキャリア初優勝を挙げたピエール・ガスリーに加えて、FIA-F2からのステップアップを果たした角田裕毅が、7年ぶりの日本人レギュラードライバーとしてデビューした。
新型パワーユニットでのシーズン前テストを大きなトラブルなく順調に終え、迎えた開幕戦バーレーンGP。予選では、昨季1回しか取れなかったポールポジション(PP)をフェルスタッペンがいきなり獲得。決勝ではルイス・ハミルトン(メルセデス)に先行を許すも、最後まで接戦を繰り広げて2位でフィニッシュ。Hondaとしては通算200回目となる表彰台に登壇した。デビュー戦の角田は9位でフィニッシュし、日本人ドライバーとして初めてデビュー戦でのポイント獲得を果たした。
イモラ・サーキットで行われた第2戦エミリア・ロマーニャGPでは、3番手から好スタートを決めたフェルスタッペンがトップを奪い、ウエットから徐々に乾いていく難しいコンディションの中で独走。今季初勝利を挙げた。第3-4戦ではハミルトンの後塵を拝し2位となったが、第4戦スペインGPではファステストラップを記録。絶対王者と互角の戦いを見せた序盤戦は、タイトル争いへの期待を膨らませた。
1988年以来のHonda勢5連勝
第5戦は世界三大レースの一つにも数えられている伝統の市街地レース、モナコGP。オーバーテイクの難しいこのコースでは予選が重要となるが、フェルスタッペンは2番グリッドを獲得。PPのシャルル・ルクレール(フェラーリ)がクラッシュの影響で出走できずに先頭からのスタートとなり、危なげなく逃げきって今季2勝目、モナコGPでの自身初勝利を挙げた。
高速の市街地コースとして知られる第6戦アゼルバイジャンGPでは、首位を快走していたフェルスタッペンにまさかのタイヤトラブルが発生。レースは赤旗中断となり、フェルスタッペンはリタイアしたが、代わってトップに立ったペレスが残り2周のスプリントレースを制して、うれしい移籍後初優勝を挙げた。さらに、4番手からリスタートしたガスリーがルクレールとのバトルを制して3位表彰台、角田はベストリザルト更新の7位と、両チームがフェルスタッペンをカバーするかのような好成績を収めた。
第7戦フランスGPでは、フェルスタッペンが開幕戦以来のPPを獲得。決勝ではハミルトンの猛追を受けてタイヤを消耗、2ストップ作戦を敢行した。21周を残して4番手でコースに戻ったフェルスタッペンは怒涛の追い上げでトップのハミルトンに迫り、残り2周で逆転に成功。優勝を果たし、3位のペレスとともに表彰台に上がった。
勢いに乗るフェルスタッペンは、オーストリアで行われた第8-9戦で2戦連続のポール・トゥ・ウイン。第9戦ではPP、優勝、ファステストラップに全ラップリードを加えた“グランドスラム”を達成した。
アクシデントで連勝がストップ
第10戦イギリスGPでは、100kmのスプリントレースによって決勝のグリッドを決める「スプリント予選」が初めて行われ、フェルスタッペンがPPを獲得。チームは6連勝を目指したが、決勝の序盤でハミルトンに接触され、高速でバリアに衝突。幸いフェルスタッペンに大きなケガはなかったが、Red Bull Racing Hondaの連勝は5でストップとなった。続く第11戦ハンガリーGPでもRed Bull Racing Hondaの2台は接触を受け、フェルスタッペンの9位フィニッシュがやっと。一方、Scuderia AlphaTauri Hondaはガスリーが5位、角田はベストリザルトを更新する6位と、いい形でシーズンを折り返した。
激化するタイトル争い
サマーブレイク明けの第12戦ベルギーGP決勝は雨のためセーフティカー先導で終了となり、PPを獲得していたフェルスタッペンが優勝。ハーフポイントながらRed Bull RacingとHondaのパートナーシップ50戦目に華を添えた。続く第13戦は、フェルスタッペンにとって初の母国GPとなるオランダGP。オレンジ色の服を着た応援団「オレンジアーミー」の熱狂的な声援を背に、フェルスタッペンがポール・トゥ・ウインを果たし、ランキング首位を取り戻した。4番手からスタートしたガスリーは後方のフェラーリ勢を抑え、4位を守ってフィニッシュした。
第14戦イタリアGPでは、Honda勢を不運が襲う。レース中盤、フェルスタッペンはピットアウト直後のハミルトンにターン1で並びかけたが、接触をしてしまい2台はグラベルにストップ。Scuderia AlphaTauri Hondaは2台ともにマシントラブルでリタイアと、同チームにとってのホームレースは厳しい結果となった。
第15戦ロシアGPで、フェルスタッペンのマシンのパワーユニットを交換。これにより最後尾グリッドからのスタートとなったが、レース中盤には7番手まで浮上した。さらに終盤雨が降り始めると、インターミディエイトタイヤへの素早い交換が功を奏し、2位までポジションを上げてフィニッシュ。優勝したハミルトンにランキング首位を奪われたものの、ペナルティーの影響を最小限にとどめた。
第16戦トルコGPは、本来は日本GPで予定されていた特別デザインのマシンで4台が走行。日本のファンへ向けた「ありがとう」の文字をリアウイングに乗せて、フェルスタッペンが2位、ペレスが3位表彰台に登壇。ハミルトンが5位に終わったことで、フェルスタッペンがランキング首位を取り戻した。
舞台はアメリカ大陸側に移り、第17戦アメリカGP。フェルスタッペンがポール・トゥ・ウイン、ペレスが3位に入りダブル表彰台を獲得した。Red Bull Racingの計らいで、山本雅史マネージングディレクターも表彰台に登壇し、勝利の美酒を味わった。
第18戦はペレスの母国メキシコで行われた。Honda勢4台はいずれもQ3進出を果たし、Red Bull Racing Hondaが2列目、ガスリーがその背後5番手に並ぶ。決勝ではフェルスタッペンが好スタートを決めてトップに立ち、独走で2連勝。ペレスは3位でフィニッシュし、3戦連続、そして母国GPで初めての表彰台に上がり、地元ファンからの大きな声援に応えた。
ハミルトンの猛追 同点で最終戦へ
2連勝でポイントリードを19点まで広げていたフェルスタッペンであったが、第19戦サンパウロGPからハミルトンの反撃が始まった。第19戦ではフェルスタッペンが後半までトップを守っていたが、59周目にハミルトンの先行を許し2位でフィニッシュ、ハミルトンが優勝。舞台を中東に移してもハミルトンの勢いを止めることはできず、カタール、サウジアラビアと連勝を許した。この結果、フェルスタッペンとハミルトンは369.5ポイントで並び、最終戦アブダビGPで決着をつけることとなった。
22戦にわたるタイトル争いはファイナルラップに劇的展開
この大会で多くポイントを取った方がチャンピオンという、分かりやすい争いとなった最終戦。フェルスタッペンのドライバーズタイトル獲得をかけて、HondaはF1ラストレースに挑んだ。フェルスタッペンは予選で今季10度目のPPを獲得。このPP獲得は、ペレスがスリップストリームを使わせる献身的なアシストによってもたらされた。
しかし、決勝のスタートでフェルスタッペンはわずかに出遅れ、2番手スタートのハミルトンの先行を許してしまう。中盤にはバーチャルセーフティカーが入るなど波乱があり、その間にフェルスタッペンはタイヤを替えてハミルトンとの差を詰めようとするが、思ったほどには近づけず。10秒以上のリードを許す苦しい展開となり、万事休すかと思われた終盤。残り6周でニコラス・ラティフィ(ウィリアムス)がクラッシュし、セーフティカーが出動。フェルスタッペンはピットへ入り、ソフトタイヤへと交換。一方のハミルトンはコース上の順位を守るためステイアウトを選択した。
10秒以上あった差はリセットされ、レースは残り1周でリスタート。チャンピオンを懸けた1周のバトルで、フェルスタッペンは5コーナーでハミルトンをオーバーテイク。再逆転を図るハミルトンを何とか抑えて、トップでチェッカーフラッグを受けた。フェルスタッペンにとっては自身初の、Hondaとしては1991年のアイルトン・セナ以来30年ぶり6度目のドライバーズタイトル獲得となった。
さらに、このファイナルラップで角田がバルテリ・ボッタス(メルセデス)をオーバーテイクして自己最高の4位に入賞、ガスリーは5位に続き、Scuderia AlphaTauri Hondaにとってもいい形でシーズンを締めくくった。
シーズンを通してメルセデス勢と一進一退の攻防を繰り広げ、フェルスタッペンのドライバーズチャンピオン獲得を成し遂げたRed Bull Racing Honda。Scuderia AlphaTauri Hondaはガスリーが第6戦での表彰台登壇を含む9度のトップ6入り、角田は7度の入賞を果たし、コンストラクターズポイントでチーム史上最多の142点を獲得した。
2015年からF1にパワーユニットサプライヤーとして復帰したHonda。7年間の集大成として臨んだシーズンは歴史に残る激しいタイトル争いとなったが、フェルスタッペンのドライバーズチャンピオン獲得という結果をもって、Hondaはその挑戦の幕を閉じた。
- Standings
Pos. | Driver | Num. | チーム | Constr. | Pts |
---|---|---|---|---|---|
1 | Max VERSTAPPEN | 33 | Red Bull Racing Honda | Red Bull Racing | 395.5 |
2 | Lewis HAMILTON | 44 | Mercedes | Mercedes | 387.5 |
3 | Valtteri BOTTAS | 77 | Mercedes | Mercedes | 226 |
4 | Sergio PEREZ | 11 | Red Bull Racing Honda | Red Bull Racing | 190 |
5 | Carlos SAINZ | 55 | Ferrari | Ferrari | 164.5 |
6 | Lando NORRIS | 4 | McLaren | McLaren Mercedes | 160 |
7 | Charles LECLERC | 16 | Ferrari | Ferrari | 159 |
8 | Daniel RICCIARDO | 3 | McLaren | McLaren Mercedes | 115 |
9 | Pierre GASLY | 10 | Scuderia AlphaTauri Honda | Scuderia AlphaTauri | 110 |
10 | Fernando ALONSO | 14 | Alpine | Alpine Renault | 81 |
11 | Esteban OCON | 31 | Alpine | Alpine Renault | 74 |
12 | Sebastian VETTEL | 5 | Aston Martin | Aston Martin Mercedes | 43 |
13 | Lance STROLL | 18 | Aston Martin | Aston Martin Mercedes | 34 |
14 | Yuki TSUNODA | 22 | Scuderia AlphaTauri Honda | Scuderia AlphaTauri | 32 |
15 | George RUSSELL | 63 | Williams | Williams Mercedes | 16 |
16 | Kimi RAIKKONEN | 7 | Alfa Romeo Racing | Alfa Romeo Racing Ferrari | 10 |
17 | Nicholas LATIFI | 6 | Williams | Williams Mercedes | 7 |
18 | Antonio GIOVINAZZI | 99 | Alfa Romeo Racing | Alfa Romeo Racing Ferrari | 3 |