Formula 1

Behind the Scenes of Honda F1 2021 - ピット裏から見る景色- Vol.04

こんにちは。Honda F1のイギリスでの拠点であるHRD-UKで開発に携わっている津吉と申します。

今はここ、イギリスのミルトンキーンズにあるファクトリーから、日本のHRD-Sakuraと日々連携を取りながら、F1パワーユニット開発のマネジメントをしています。このコラムは今回から計3回を担当することになるそうなので、私のここでの仕事内容や、これまでのキャリアに加え、最終年を迎えて感じていることなどについてお話ししたいと思います。

Behind the Scenes of Honda F1 2021 - ピット裏から見る景色- Vol.04

―待望の今季初勝利!開発の成果が報われる想いです

まずは先日の第2戦エミリア・ロマーニャGP、本当にうれしかったですね。応援いただいていた日本のF1ファンのみなさんにも、おめでとうございます!の言葉を贈ります。



ウェットコンディションから始まって荒れた展開になったレースで、マックス(フェルスタッペン)が完ぺきなレースをしてくれました。Hondaとしても、競争力のあるパワーをPUから供給できましたし、昨年何度か上手くいかなかったスタートについても時間をかけてRed Bullと一緒に改善してきたので、今回バッチリ決められたことが本当に嬉しかったですね。



2位になった開幕戦はとても悔しかったですし、勝たないと意味がないと改めて感じました。今年のマシンが十分に戦えるのはよくわかったのですが、勝てなかったのにはチーム全体として理由があると思っていたので、それらを乗り越えて今回勝利を挙げられたことも大きいと思います。PUとしてはレギュレーションによりシーズン中のアップデートができませんが、HRD-Sakuraと私のいるHRD-UKのチームが一緒になって、今後もドライバビリティーなどの使い方の部分で開発に取り組んでいきます。

―イギリスと日本の連携で24時間体制の開発

さて、ここからは私の仕事について少し話していきます。以前のこのコラムでも触れられていたのですが、ここHRD-UKではF1のハイブリッドパワーユニットのエナジーストア(バッテリー)部分の開発を行っています。エンジンのベンチテスト業務も一部イギリス側でも行っており、この2つのプロジェクトを私が見ている形です。具体的には、設計を除く、バッテリーに関するシステム/電装/テストの3部門と、PUのベンチテストの計4部門を管轄しています。



エンジンのベンチテストはその大部分をSakuraで行っていますが、HRD-UKではPU(エンジン)にトランスミッションをつけて行う、より実走に近い形のテスト、つまり開発フェーズで言うと最終段階に近い部分のベンチテストを、Red Bull Technologyと一緒に行っています。サーキットごとに異なるPUのセッティングなども、Sakuraと連携する形で実施しており、イギリスで日中に行った作業をSakuraに引き継いで、イギリスの夜間には日本側でテストと言った感じで、ほぼ24時間、日英のどちらかでテストベンチが回っているような体制が取られています。

HRD-UKのバッテリー開発チームやテストベンチチームは、日本からの駐在員数名のほか、欧州を中心に15か国ほどから集まった多国籍のメンバーからなる混成チームで構成されいます。私は今回のF1プロジェクトには2016年から携わっていますが、HRD-UKのマネージャーというポジションは2019年のUK駐在赴任時からを担当しています。外国人の部下を持つのも初めてでしたし、海外でのマネジメントは自分にとって大きなチャレンジになりました。

―個性の強いメンバーを活かすチーム作りとは

チームを効率よく機能させ、開発のスピードと質を上げていくことが求められている中で、私の役割は各メンバーの能力や素質を見極めながら、それぞれの特徴にあったポジションや仕事を任せて、人材を育成することだと思っています。ひとりひとりが自分の仕事に満足しつつ、チームとしても結果を出していく姿が理想ですね。



私は小学校から大学までサッカーに打ち込んでいましたが、その際に経験したサッカーのチーム作りとF1開発のチーム作りは、よく似ているなとも感じます。プロとアマの大きな違いはありますが、技術もプライドも高い面々が同じ目標・目的を目指す中で、個々の能力を引き出して、いかにチームとして最適・最高のパフォーマンスに繋げるかという部分は、サッカーにもF1にも共通しています。1+1を3や4にしていくのがマネジメントの仕事ですが、それに加えて「個人の特徴にあった居場所を作る」ことを心掛けながら仕事をしています。

―日欧での働き方の違いと、Hondaの気風が交わると

一方で、日欧で異なるなと感じるのは、仕事に対する取り組み方という部分でしょうか。こちらでは”ジョブ・ディスクリプション”などで細かく職務内容が決まっており、そこに書いてある部分をとことんやっていくのが基本です。契約社会ということもありますし、雇用形態の違いもあると思いますが、普通は自分に与えられた仕事以上の部分に手を出すことはありません。むしろ人の仕事、つまり自分の領域外に手を出すことはルール違反なので、仕事の進め方としてもスタンダードではありません。もちろん、仕事に対してやる気がないということではなく、逆にどんどん自分に仕事をやらせてほしいという想いはみんなが持っています。

一方で、Hondaには自分の仕事の領域外に飛び出していく、積極的に繋がっていくことが推奨される文化があります。私自身もそのように先輩から教わってきましたし、自分のキャリア形成を振り返って見てみてもそのようなやり方で、技術や知見を高めてきました。ですので、いま一緒に働いている欧米出身のメンバーについても、『Hondaで働いている限りはやりたいことはやっていいんだよ』と伝えています。



自分の領域外のことでもアイデアがあれば手を挙げてもらい、それをきちんと評価してあげることが、最終的にはチームのアウトプットの上昇につながると思っています。彼らのスタンダードではないのですが、モチベーションの高い面々がそろっているので、それを活かしつつ、のびのびと仕事をしてもらえればと思っています。自分もこれまでそのような形でエンジニアとして育ててもらいましたし、日欧の違いはあれど、彼らがエンジニアとしての幅を広げていくことの手助けができればと考えています。

今回はこのように私の現在のイギリスでの仕事内容や、仲間たちについて話をさせてもらいました。次回はポルトガルGP後に、今度は私のキャリアについて書かせてもらえればと思っていますので、引き続きのお付き合いを、よろしくお願いいたします。

そしてまずはその前に、次のレースも勝ちたいですね!


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