Formula 1

Behind the Scenes of Honda F1 2021 -ピット裏から見る景色- Vol.15

皆さんこんにちは。本コラムの編集を担当している、Honda F1広報のスズキです。日本は暑い夏もそろそろ終わりが見えてきたというところでしょうか。こちら欧州は秋の気配が漂ってきて、チラホラ紅葉も始まっています。F1の2021年シーズンも後半戦に突入し、Honda F1にとってはプロジェクトの終了まであと9戦を残すところになりました。

Behind the Scenes of Honda F1 2021 -ピット裏から見る景色- Vol.15

―オランダGP快勝!熱狂的な雰囲気でした

後半戦のスタートとなったベルギー・スパでのレースは、雨によりセーフティカー先導で数周のみ行ってレース終了という残念な形でしたが、ポールポジションからスタートしたフェルスタッペン選手がトップのまま終了し、ハーフポイントながら優勝することができました。



そして、先週末のオランダGP。ベルギーGPも合わせると、イギリスGPから3戦まともにレースを走れていなかったRed Bull Racingが、その鬱憤を晴らすかのような形で、フェルスタッペン選手の母国で見事な勝利を挙げました。Hondaにとっては1度きりのオランダGPで、熱狂的なファンがいるだけに、開催が発表された当初からどうなることやらと緊張を感じていたGPでもありました。その失敗が許されないレースでポール・トゥ・ウインというこれ以上ない形で勝利を挙げられたことは、マックス(・フェルスタッペン)とチームの見事な仕事のおかげであるのは言うまでもないですが、同時にHondaのエンジニアやメカニックなどが地道に積み上げてきた努力が実を結んだとも感じています。



36年ぶりのレースとなったザントフォールト・サーキットは、地元のファンから毎日大きな声援を受ける形で、すごい雰囲気の中での勝利になりました。こちらはスタート前のグランドスタンドですが、ファンのチャントがサッカースタジアムみたいですよね。レース後の盛り上がりはこれをさらに上回るものでした。

―勇気づけられた”オレンジアーミー”のチャント

実は、2019年にF1復帰後の初勝利を挙げた際にも、ホームストレートをオレンジ色のファンが埋め尽くし、大きな声を上げて歌っていたのですが、その際は「Honda can do!!」というチャントが終わらなかったのを非常に鮮明に覚えています。このレースはHondaのF1に関わるメンバー全員にとって特別なものでしたが、現場にいさせてもらった僕にとっては、あのファンのチャントが一つのハイライトでもあります。そこまで苦しんできたHonda F1にさらなる勇気を与えてくれたような気もしています。



田辺テクニカルディレクター、山本マネージングディレクターなどもインタビューで答えていましたが、今回はサーキットの横にあるホテルに泊まっていたので、毎日ファンと同じゲートを使い、徒歩でパドックまで行き来していました。その際にも山本さんや田辺さんには「Honda!!!!」という声がたくさんかけられていました。メンバーのみんなも口々に「鈴鹿みたいな雰囲気だね」と話していましたが、僕も同じように感じました。

水曜くらいからサーキットの前に集まり、HondaやRed Bullだけでなく、すべてのチームを温かく迎え、サーキットという場所・F1というスポーツを心から楽しむ様子は、僕たちが例年目にしていた鈴鹿サーキットを訪れる皆さんの姿と重なるものがありました。



マックスが母国のファンの前で勝利した姿を見たこともあり、「最後に鈴鹿で、Hondaロゴが入ったマシンのトップチェッカーを見たかった」という想いを改めて強く感じました。日本の諸状況を考慮すると日本GPの中止はやむを得ないもののように思います。ただ、ラストイヤーで日本GPを戦えないことは、Honda F1に関わる人たちみんなが、ファンのみなさん同様に、言葉では言い表せないほどの残念な想いを抱えていると思います。

―祝!1000フォロワー!皆さんに感謝です

さて、前段が少し長引いたのですが、このたび、皆さまのおかげでこのHonda F1のnoteのフォロワー数が1,000人を突破することができました!いつもお読みいただいている皆さまも、最近存在を知ったという方々も、本当にありがとうございます。

手作り感たっぷりの本コラムですが、毎回Honda F1のウェブサイトも合わせ、たくさんの皆さんに読んでいただいていることを本当にうれしく思っています。正直、開始当初はこんなに多くの方に見てもらえると思っていなかったので、嬉しい驚きです。



もともとは「どんなメンバーがどのような想いでHondaのF1で戦っているのかを、少しでも知ってもらえたら」と思って始めたこのコラム。編集を担当する僕自身も、各チームメイトのストーリーを読むと、Hondaという看板を背負い、世界トップレベルの舞台で戦うことに各々が責任と自負を持って仕事をしていることを実感します。また、その姿や言葉に強く感銘を受けることもしばしばです。

F1はドライバーとマシンがメインのスポーツですので、なかなかそのような「熱量」みたいなものは、スクリーン越しでは伝わりにくいのかもしれません。ただ、このコラムを通して、あのマシンの裏側に多くの人の情熱と努力の結晶が詰まっているんだなと、心の隅でそんなことを感じてもらえると嬉しいなと思ってます。



―Honda F1 広報の仕事とは?

控えめなメンバーが多いので、実は人選にも毎回苦労しています。誰かに頼みに行くたびに「お前がやれよ」といったこともよく言われます。(本当は最後まで逃げ切ろうという想いはあったのですが笑)ちょうどいい機会ですので、今回は、1000人突破記念ということにかこつけて、僕自身の仕事内容やキャリアを語ってみようと思います。2回くらいに分けてかと思っていますが、時間を持て余している方は「冗長な文章だな」と感じるあたりまで読んでいただけば幸いです。

僕は現在、Honda F1の広報担当の仕事をしています。2017年から担当させてもらっているので、今年で5年目になります。



何をやっているの?と聞かれると結構多岐にわたるのでなかなか説明が難しいかもしれません。広報ですので、レースウイークでの田辺テクニカルディレクターや山本マネージングディレクターの取材アレンジ・コメントの発信・プレスリリースなどの準備は当然ですが、それ以外にもHonda F1のSNSアカウントのマネジメント、そしてこのコラムも含め、WebサイトやSNSなどで発信する大小のコンテンツ企画・制作などといったことも行っています。

コンテンツというと分かりにくいかもしれませんが、シーズン前や半ばにアップするHonda F1の映像の企画・制作や、Red Bull Racingとのコラボコンテンツの制作アレンジ、それにサーキット週末の様子をまとめたミニ動画みたいな部分にも携わっています。



僕がいるUKサイドの制作と、青山側での制作の両方があるので、本社側と一緒に組んだ年間の予定を基にしています。ベルギーGPでRed Bullと一緒に行った50戦記念企画なども、そういったものの一つです。イギリスに駐在しながら全戦を巡り、広報やSNSに携わるローカルメンバー数名や、日本でレース週末の対応をしてくれるメンバー、そしてRed Bull RacingやScderia AlphaTauriとも 随時連携しながら、F1に関する情報発信を行っています。

コンストラクターではなくPUサプライヤーということもあり、おそらく皆さんが想像するよりもずっと少人数でオペレーションを回していますので、自分で手を動かす仕事も多いです。広報領域以外でも、チームとの橋渡し役みたいなことをすることもあります。



―会社を背負った仕事のプレッシャーとやりがい

僕自身はマクラーレンと仕事したのは1年のみで、2018年にToro Rosso(現在のAlphaTauri)に切り替わるタイミングで、広報領域でも体制や方法など、多くのことを変更しました。その後4年かけて今の体制・やり方を築いてきたという感じです。年数を重ねてきただけのことはあり、AlphaTauriとRed Bullの広報のメンバーや首脳陣ともかなり距離が近いので、手前味噌ですがエンジニアたちと同様に「ワンチーム」で動けているかなという気がしています。

HondaのF1関連のニュースは、時としてプロダクトのニュース以上に国内外でメディアに取り上げられることがあります。ですので、発信にあたってはエンジニアやメカニックとはまた別の意味で「Hondaの看板を背負っている」という意識とプレッシャーの下で日々仕事をしています。自分が関わる発信一つで、Hondaというブランドのイメージがグローバルで大きく上がったり下がったりしかねませんし、実際にF1が元で会社が大きなバッシングを受けていた時期もあったので、怖さみたいなものを常に感じています。



一方で、「F1を舞台に世界で戦うHonda」に憧れて入社した立場からすると、まさに夢のような仕事をさせてもらっているとも思っています。当然、スポーツですのでいいときと悪いときがあり、僕の仕事もそれに影響される部分が多いです。ただ、僕はHondaが企業としてF1に参戦すること自体が大きな意味を持ってきたと思っているので、広報としてはその意義や想いみたいなものをきちんと伝えたいと常に考えてきました。そういったことのベースになっているのは、もしかしたら自分が10代の時に憧れた「世界で戦うHonda」の姿かもしれません。



企業としての方向性は時代に応じて変わっていくので、それにどうF1をリンクさせていくかということも大切になります。その辺りを本社のメンバーと議論を重ね、いま私たちがこのプロジェクトを通して何を伝えなければいけないかということを根幹に持っておくのが、この仕事の基本かなと考えています。そして、日本やイギリスにこのような想いを共有できるメンバーがいることを、とても心強く感じています。

と、ここまで、なんとなく今の仕事の内容をさらっと書いてみましたが、次回は僕自身のキャリアと、F1での4年間という部分に触れていきたいと思っています。実際に自分で書いてみると、皆さんにとっていったい何が興味深く、どこまで細かく書けばいいかという点が分からなくなってきて、これまで担当してきたメンバーの苦労をうかがい知ることができている次第です。

また次回以降も徒然に書いていきますので、お時間のある方はお付き合いをいただけますと幸いです。


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