ジーノ・リア、EWC開幕戦のパレードラップに参加
昨年F.C.C. TSR Honda Franceに加入し、好調の波に乗っていたジーノ・リアは、鈴鹿8時間耐久ロードレースの練習走行中にクラッシュ。7日間にわたって昏睡状態に陥り、予後がはっきりしないまま、命がけで戦っていました。それから7カ月、リアは予想と医学的見地を覆し、再びバイクに乗るようになりました。
昨年、ジーノ・リアは絶好調でした。FIM世界耐久ロードレース選手権(EWC)第2戦、スパ24時間レースでは、ウエットコンディションで最後の最後まで表彰台争いを展開し、4位のライダーをわずか0.5秒差で振り切って3位を獲得。世界選手権タイトル争いへの希望を鈴鹿8耐に持ち込みました。
2017/2018シーズンのチャンピオンチームへの期待は高かったものの、2022年8月6日、リアの世界はひっくり返されました。鈴鹿8耐のトップ10トライアルを前にした練習走行中にクラッシュし、ドクターヘリで病院へと搬送。医学的な予後が不明確なまま7日間昏睡状態に陥り、生命の危機に直面していました。
一命を取り留めたリアは、そこからリハビリに取り組み始めると、医学的な見解を覆すような回復をみせ、7カ月後には再びバイクに乗れるようになりました。そして、4月14日から16日にかけてル・マンで開催されるEWC開幕戦でパレードラップを行います。昨年のEWC王者の一人であるリアに、英国スーパーバイク選手権(BSB)開幕戦の会場で話を聞きました。
パレードラップへの参加
「まず第一に、レース会場に戻ってこられたことをうれしく思いますし、HondaとTSRチームを代表してル・マンでパレードラップを行うことを楽しみにしています。これまで、こういったパレードラップというものを尊敬と憧れの対象として見てきましたので、参加を快諾しました。自分自身がそれをする立場になるとは思ってもみなかったので、依頼されるのはとてもうれしいことです」
「この状況に戻ってこられたことを光栄に思いますし、回復は予想以上でした。当時は昏睡状態にも陥って、意識を取り戻してからも、この先どうなるのか、日本を離れることができるのかなどといろいろな人に聞かれました。こうして戻ってきてパレードラップができることは、とても光栄なことで、本当に感謝しています。回復のスピードは、医療関係者が予想していたよりも少し早かったようです」
再びバイクに
「4月の初め、カルタヘナで行われたサーキット走行会で、CBR1000RR-R FIREBLADEを走らせました。何の問題もなく、一日終わってみると楽しい感覚が戻りました。ル・マンに到着して、ぶっつけ本番でサーキットを走るのは嫌だったので、肩慣らしのつもりでした。でも、最終的にはそれ以上のものになったし、マシンのフィーリングもよかった。幸せな一日でした」
レースへの葛藤
「パレードラップができる、チームをサポートできる、そういうポジションにいるということは、とてもポジティブなことですが、レースに参加したいという悔しい気持ちもあります。昨年はチャンピオンを獲得できたので、ゼッケン1を付けて走りたい。だから、悔しい思いはたくさんあります。でも、緊張はしていません。先週(カルタヘナでの走行会)の方が、長い間バイクから遠ざかっていて、初めて復帰するときは何が起こるかわからないから、緊張していたと思います。でもうまくいったし、ル・マンへの準備に役立ちました」
回復、そして復帰への道
「予測することが一番難しいのは、時間です。私がやりたいことは、他のライダーたちと同じことです。チャンピオンシップで競争力を発揮できるように戻りたい。このBSBの会場にいると、たくさんの思い出がよみがえります。レースで勝ったこともあるし、昨年のEWCで世界チャンピオンになったことも、復帰へのモチベーションになります。難しいのは、時期です。自分を過小評価したくはない。常に期待に応えたいし、それが目標です。準備ができたらレースに復帰する。EWCに戻りたいですが、少し難しいとも思うので、もしBSBに戻る機会があれば、その可能性を排除することはないと思います」
「疑いというほどでもありませんが、不安はありました。それは、『自分が望む場所に戻るために、十分に強く、健康で、精神的に余裕があるのか』ということです。願望はあり、自分が求めていることに一点の曇りもありませんが、その不安があったのです」
「危険なスポーツをやっていると承知していても、誰しも自分の身に降りかかるとは思わないものです。それを思ってしまうと、1秒遅くなるんです。それはバイクレース全般に言えることで、どんな種類のプロスポーツでも同じだと思います。ネガティブに考えてしまうと、その考えが頭の奥に残ってしまい、スピードが落ちてしまうのです」
復帰へのサポート
「妻のイザベラをはじめ、リハビリの過程でずっとそばにいてくれた家族に感謝の気持ちを伝えたい。そして、すべての過程で私を支え、もちろん昨年のチャンピオン獲得に貢献してくれたHondaとF.C.C. TSR Honda Franceチームに大きな感謝の気持ちを伝えたい」
「藤井さん(正和/F.C.C. TSR Honda France監督)は、今回の件に関して、本当にすばらしい対応をしてくれました。友人と一緒にイギリスまで飛んできて、空港からタクシーに乗って私の実家まで会いに来てくれて、優勝メダルをプレゼントしてくれたり、私の回復の経過を聞いてくれたりしました。彼が最近ヨーロッパに来たときには、バルセロナからアリカンテまで飛んできて、また僕に会いに来てくれました。そのサポートに本当に感激しています」
世界チャンピオンであるF.C.C. TSR Honda Franceは、4月13日(木)にフランスのル・マンで開催される24時間レースの予選から、2023年のタイトル防衛に向けた戦いを開始します。
ジーノ・リアは、現地時間の15日(土)14時25分(日本時間:21時25分)に、スタート前のパレードラップを走行する予定です。EWC シリーズの2023開幕戦は、現地時間15時(日本時間22時)にスタートします。
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