Endurance World Championship

人もマシンも試される「FIM世界耐久選手権」を知る

FIM世界耐久選手権(以下、EWC)は、MotoGPといったカテゴリーの1シーズン(21レース)の合計走行距離より長い距離を1レースで走る、ライダー・マシンともに過酷なレースカテゴリーの一つです。

人もマシンも試される「FIM世界耐久選手権」を知る

4月15日(土)から16日(日)にかけて、2023年シーズンのEWCは「ル・マン24時間レース」で幕を開けます。2022年の優勝チームは、 840周・3,515.4kmを全力で走破しました。

EWCのレギュレーション

EWCに参戦するには、体力に加え、決断力や根性といった精神力、3人のライダー(+リザーブライダー)、そして頼りになるチームと信頼できるマシンが必要です。

2023年は、最高峰のフォーミュラEWCクラスに2チーム、スーパーストック(SST)クラスに5チームの計7チームがHonda CBR1000RR-R FIREBLADE SPで参戦します。

フォーミュラEWCクラスでは、マシンの外観はホモロゲーションされた市販モデルと全く同じですが、フロントフォークやダンパー、スイングアーム、ブレーキ、ラジエーター、エキゾーストサイレンサーなどの変更が許可されており、またエンジンの性能向上も認められています。ピットストップの迅速化を図るため、全車両がクイックホイールチェンジシステムを採用しています。

スーパーストッククラスのマシンは市販車とほぼ同じですが、インジェクタージェットや燃料マッピングといった限定的なエンジンの改造やクラッチの補強、エキゾーストサイレンサーの交換などが許可されています。ホイールはホモロゲーションのままでなければならないので、チームはピット時のタイヤ交換の戦略を立てる必要があります。

両クラスとも175kgという重量制限がありますが、フォーミュラEWCクラスのマシンは黒いナンバープレート(暗くなると白いヘッドランプが点灯)、スーパーストッククラスのマシンは赤いナンバープレートと黄色のヘッドランプなので、コース上で簡単に見分けることができます。

両クラスとも、燃料タンクは最大24Lの容量とされています。ピットストップはメカニック4名と給油係1名に限定されるため、タイヤ交換や給油、メカニカルメンテナンスの管理は熟練した技術が必要です。

クラッシュの後など、マシンの修理が必要な場合は、追加の人員を配置できますが、作業を行う前にマシンをピットボックス内に持ち込む必要があります。

8時間以内のレースで1位になると30ポイント、8~12時間レースでは35ポイント、12時間超では40ポイントが与えられます。つまり、レース時間が長ければ長いほどチャンピオン獲得を狙う上で重要になります。24時間レースでは、8時間経過するごとに先頭チームに10ポイントが加算されます。

2023年シーズンのEWCは、24時間レースの象徴ともいえるフランスのル・マン、ベルギーのスパ・フランコルシャン、フランスのボルドールという3レースに加え、第3戦には2022年にHondaが28回目の優勝を飾った鈴鹿8時間耐久ロードレースが予定されています。



Hondaの耐久レース挑戦の歴史

耐久レースにおいてHondaは長い歴史を持ち、数々の成功を収めてきました。1975年11月、Hondaは国際耐久レースへの復帰を決意し、HERT(Honda Endurance Racing Team)を結成。経験豊富なエンジニアの秋鹿方彦が監督に選ばれました。Hondaの副社長である川島喜八郎からかけられた言葉は「勝て」のひと言でした。

秋鹿は「チームはまったくのゼロからスタートするべき」という考えから、メカニックもエンジニアも、レース経験のない若い世代から選びました。彼らの目標は、1976年のボルドール24時間レースで優勝し、ヨーロッパ耐久選手権のタイトルを獲得すること。その第一歩として、4月25日にはオランダのザントフォールト600kmに参戦。新しいレーシングマシンの設計と製作期間は、わずか6カ月しかありませんでした。

新型レーシングマシンの開発ではCB750FOURのエンジンを選定。急造されたRCB1000は、地元の系列チームであるHonda FranceとHonda UKにそれぞれ1台ずつ貸し出されました。

4月25日、例年になく寒い春の陽気の中で開催されたザントフォールト600kmでは、4周目にHonda Franceがトップに立ち、そのまま2周差をつけて優勝を飾りました。1976年のヨーロッパ耐久選手権でHondaは8戦中7勝(うち1-2フィニッシュ4回)を挙げ、初年度からチャンピオンに輝きました。

近年では、F.C.C. TSR Honda Franceが2022 FIM EWCチームチャンピオンとライダーズチャンピオン、さらに2017-2018チームチャンピオンとマニュファクチャラーズチャンピオンのタイトルを獲得しています。



2023年シーズンのHonda参戦チーム

今シーズンのEWCに参戦するチームは以下の通りです。

 

フォーミュラEWCクラス

#1 F.C.C. TSR Honda France

#333 Honda Viltaïs Racing

 

スーパーストッククラス

#30 GT Endurance

#32 Ecole de la Performance Endurance – TBC

#41 RAC 41 Chromeburner

#44 Honda No Limits

#55 National Motos Honda

 

クラスによってナンバープレートの色が違うように、各チームのライダーも識別しやすいよう青、赤、黄の3色の腕章をつけて走ります。なお、リザーブライダーは緑色の腕章です。

初勝利から47年、Honda CBR1000RR-R FIREBLADE SPで、2022年王者 F.C.C. TSR Honda France を始めとするHonda参戦チームは、再び「勝つ」ことを目指します。


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