【鈴鹿8耐プレビュー】前人未到の5連覇に挑むHonda HRCを筆頭に、Honda勢の注目チームを紹介!
7月5日(日)、「2026 FIM世界耐久選手権“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第47回大会(以下、鈴鹿8耐)」の決勝が鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催されます。今年は酷暑対策として従来のスケジュールから開催時期が前倒しされ、例年とは異なるコンディションの中で8時間にわたる熱戦が繰り広げられます。

鈴鹿8耐は、1978年に始まった日本を代表する二輪耐久レースです。現在はFIM世界耐久選手権(EWC)に組み込まれており、毎年夏に開催されることから「真夏のバイクの祭典」として多くのファンに親しまれてきました。特に、80~90年代初頭には16万人を超える観客を集め、近年でも5~8万人が来場するビッグイベントとなっています。
レースでは、1台のマシンを2、3人のライダーが交代しながら走行し、8時間という限られた時間の中で最も多くの周回数を記録したチームが優勝となります。問われるのはライダーの純粋な速さだけではありません。レース中に行われる給油、タイヤ交換、ライダー交代といったピットワークなど、メカニックやチーム全体の総合力も勝敗を左右します。
一方で、近年の鈴鹿8耐は酷暑との戦いでもありました。しかも、世界的な気候変動の影響もあり、開催環境は年々厳しさを増しています。そこで今年は、ライダーやチームスタッフ、それから観客の安全を考慮し、従来の7月下旬〜8月上旬という開催時期を前倒しし、7月上旬へと変更されました。暑さの緩和が期待される一方で、梅雨の時期と重なるため、どのようなコンディションでの戦いになるのかは未知数です。
今大会も例年通り国内外から、Honda、ヤマハ、スズキ、カワサキ、BMWなど多彩なマシンを携えて強豪チームがエントリーしています。ロードレース世界選手権(MotoGP)やスーパーバイク世界選手権(WSBK)で活躍するトップライダーを起用するワークスチームに加え、全日本ロードレース選手権(JRR)のトップライダーを中心としたチーム、さらに近年ではEWCフル参戦チームなども優勝争いに加わり、し烈な戦いが予想されます。特にEWCフル参戦チームにとって鈴鹿8耐は全4戦中の1戦となるため、年間タイトルの行方を占う重要なレースでもあります。

鈴鹿8耐においてHondaとしては通算31勝を挙げてきましたが、今年特に注目なのが「Honda HRC」です。
HRCはHondaのモータースポーツ活動を統括するレーシング専門会社であり、MotoGPや鈴鹿8耐をはじめとする世界最高峰カテゴリーで、ワークスマシンの開発・運営を担ってきました。Hondaのレース活動を支える中核組織として培ってきた技術力とチーム力は、鈴鹿8耐でも大きな強みとなっています。そんなHRCが送り込むファクトリーチームのHonda HRCは近年も圧倒的な強さをみせており、現在4連覇中。今大会では前人未到の5連覇という偉業に挑みます。
ライダーは鈴鹿8耐史上最多となる通算7勝を誇る“鈴鹿の絶対王者"高橋巧を筆頭に、かつてWSBKで6度の世界王者に輝き、現在はHondaのスーパーバイク開発ライダーを務めるジョナサン・レイ、そして現在WSBKに参戦中のソムキアット・チャントラの3人で挑みます。
当初、MotoGPに参戦中のヨハン・ザルコがメンバー入りしていました。しかし、今年のMotoGP第6戦カタルニアGPの決勝で、多重クラッシュに巻き込まれ、左ヒザのじん帯損傷および左足首(腓骨周辺)を骨折する重傷を負ったため、無念の欠場を余儀なくされました。
これを受け、代役として白羽の矢が立ったのがチャントラでした。Moto3クラス、Moto2クラス、MotoGPクラス、そしてWSBKと、各カテゴリーで一貫してHondaライダーとして経験を積んできたチャントラは、鈴鹿でのプライベートテストでも好走。その結果、第4ライダーから昇格するかたちで出場が決まりました。また、直近のWSBK第7戦ミサノではレース1とスーパーポールレースが15位、レース2では13位と調子を上げています。
アクシデントによって急きょ新体制となったHonda HRCが、逆境を乗り越えて5連覇を成し遂げるのか。その走りに大きな注目が集まります。

「F.C.C. TSR Honda France」は、鈴鹿に本拠地を置き、EWCにフル参戦しているチームです。1980~90年代にかけて若手ライダーを育成し、JRRやWGP(現MotoGP)、鈴鹿8耐に数多く参戦してきました。鈴鹿8耐では通算3勝を挙げ、EWCでは2度の世界チャンピオンに輝いた実績を持ちます。
今季はアラン・テシェ、コロンタン・ペロラーリ、ジョン・マクフィーの3人で臨みます。今年のEWCではトップ争いを演じる速さをみせながらも、アクシデントの影響もあり、現在は総合ランキング12位。しかし、エースのテシェを中心に事前テストではトップクラスのタイムを連発しており、ホームレースへ向けた準備は着実に進んでいます。
鈴鹿8耐でシーズンの流れを変える走りをみせられるか、期待がかかります。

「SDG Team HARC-PRO. Honda」は、JRRで数々のチャンピオンを輩出してきた名門チームです。ここから世界へ羽ばたき、WGPやMotoGPで活躍したライダーも多く、近年はアジアロードレース選手権(ARRC)にも参戦するなど、アジア圏でも高い知名度を誇ります。
鈴鹿8耐では通算3勝を挙げ、毎年優勝候補の一角です。今年は昨年と同じく、國井勇輝、名越哲平、阿部恵斗の3人でエントリーします。昨年Moto2クラスに参戦していた國井は、今季からJRRのJSB1000クラスへ戦いの場を移し、現在は総合ランキング5位につけています。また、名越は今年からST1000クラスにスイッチし、同クラスで総合ランキング4位。阿部はARRCのASB1000クラスで総合ランキング2位につけ、タイトル争いを繰り広げています。
昨年も同メンバーで優勝争いに加わりながらも結果は4位入賞。今年は悲願の表彰台、そして優勝を目指します。

「Honda Asia-Dream Racing with Astemo」は、Hondaがアジア地域のトップライダー育成と、アジア市場でのブランド強化を目的として運営する国際レーシングチームです。
ARRCのASB1000クラスにHONDA RACING THAILANDから参戦しているナカリン・アティラットプワパットを起用しました。アティラットプワパットは昨年、JRRのST1000クラスとARRCのASB1000クラスの両シリーズを戦い、JRRでは総合ランキング6位、ARRCでは3勝を挙げて総合ランキング2位を獲得しました。今季はARRCに専念し、総合ランキング4位につけています。
さらに、同じくARRCに参戦しているモハメド・アデナンタ・プタラとカイルール・イダム・パウィがチームメートに加わります。プタラはASTRA HONDA RACING TEAMからASB1000クラスにエントリーしており、総合ランキング7位。パウィはIDEMITSU HONDA RACING MALAYSIAからSS600クラスで戦っており、総合ランキング11位につけています。
これからのARRCを担う若き才能が集結し、上位進出を狙います。

「Astemo Pro Honda SI Racing」は、鈴鹿8耐で通算4勝、歴代最多となる7回のポールポジション獲得を誇るレジェンドライダーである伊藤真一監督が率いるチームです。
今年も昨年同様、JRRでのタイトル獲得に加え、WSBKやMoto2クラスへの参戦経験を持つ野左根航汰をエースに据えます。JSB1000クラスでも存在感を示す実力者がチームをけん引します。
チームメートには、昨年のST1000クラスのチャンピオンで、今年もランキング首位を快走する羽田太河、そして同クラスでトップ争いを繰り広げる荒川晃大が名を連ねます。昨年は表彰台争いを演じながらもトラブルにより無念のリタイア。
JRRでもチームメートとして切磋琢磨する3人が、その強固な連携を武器に鈴鹿8耐に挑みます。

「Team ATJ with NTT docomo Business」は、Hondaの研究・開発や車両テストを支えるATJ(Auto Technic Japan)が運営するチームです。
JSB1000クラスで活躍する岩田悟、鈴木光来に加え、ST1000クラスにTOHO Racingから参戦している國峰啄磨の3人体制で臨みます。
昨年も同じメンバーで出場し、チーム初となるトップ10トライアルへ進出を果たすと、9番グリッドから決勝7位という好成績を残しました。
今年はさらなる飛躍を目指し、悲願の表彰台獲得を狙います。

「TEAM SAKURAI HONDA」は、Honda Dream店を展開する桜井ホンダが運営し、1989年からJRRや鈴鹿8耐へ参戦を続ける名門レーシングチームです。2003年には鈴鹿8耐で優勝、04年にはJSB1000クラスでタイトルを獲得しています。
今大会は、JSB1000クラスにフル参戦している伊藤和輝、全日本スーパーモト選手権で活躍した日浦大治朗、そしてMoto3クラスで戦う山中琉聖を迎えた布陣で上位進出を目指します。
また、Hondaには熊本製作所、浜松製作所、鈴鹿製作所、栃木研究所などを中心とした事業所系チームも存在します。社員ライダーとメカニックが一体となって参戦する“現場発”のレーシング活動であり、開発・生産・研究の各拠点が技術検証と人材育成を目的に独自のレース文化を築いてきました。
特に今大会では、Honda熊本製作所系チーム「Honda緑陽会熊本レーシング」が、サンリオとの特別プロジェクト「SANRIO CHARACTERS × Honda Kumamoto Racing」としてエントリー。人気キャラクターの「クロミ」をモチーフとしたCBR1000RR-Rでレースに臨み、若年層へのモータースポーツ普及と交通安全啓発をテーマに活動を展開します。
2026年の鈴鹿8耐には、総勢50チームがエントリーを予定(6月11日現在)。国内外のトップライダー、ワークスチーム、EWCフル参戦チーム、そしてHonda事業所系のチームなどが集結し、世界最高峰の耐久レースにふさわしい歴史に残る熱戦が幕を開けようとしています。