【鈴鹿8耐プレビュー】4連覇を狙うHonda HRCをはじめ、Honda勢の注目チームを紹介
8月3日(日)、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で「2025 FIM世界耐久選手権“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会(以下、鈴鹿8耐)」が行われます。鈴鹿8耐は毎年夏に開催される日本最大級の二輪耐久レースで、FIM世界耐久選手権(EWC)の一戦として位置づけられています。

レースは11時30分にスタートし、19時30分にチェッカーが振られ、この8時間で最も多く周回したチームが優勝となります。各チームは2~3人のライダーが1台のマシンを共有し、およそ1時間に1回ピットインしてライダー交代や給油、タイヤ交換を実施。8月の鈴鹿は気温・路面温度ともに非常に高く、マシンの耐久性、ライダーのテクニックや体力、そして戦略を含めたチームワークが試されます。
国内では「真夏のバイクの祭典」ともいわれており、ピーク時の1990年には16万人、近年でも5~8万人を動員。会場の熱気とファンの一体感が大きな魅力で、多くのスターライダーを生み出してきました。Hondaはこの大会でこれまでに30勝を挙げています。
今年の大会にはHonda、ヤマハ、スズキ、カワサキ、ドゥカティ、BMWなど、多彩なマシンを擁する国内外の強豪チームがエントリー。ロードレース世界選手権(MotoGP)やスーパーバイク世界選手権(WSBK)で活躍するトップライダーを招集するワークスチームや、全日本ロードレース選手権(JRR)のライダーを中心としたチームだけでなく、近年はEWCフル参戦チームがトップ争いに加わり、し烈な戦いを繰り広げています。また、EWCフル参戦チームにとっては、年間4戦しかないシリーズの中、ランキング争いの上でも重要な戦いとなります。

Hondaが鈴鹿8耐のために結成するワークスチーム「Honda HRC」は、テストライダーの高橋巧、MotoGP参戦中のヨハン・ザルコ、WSBK参戦中のイケル・レクオーナの3人を起用。高橋はチームの顔ともいえるライダーで、昨年は3年連続優勝を果たし、鈴鹿8耐での単独最多勝となる6勝を達成。今年は4連覇と最多勝記録更新を狙います。ザルコはCASTROL Honda LCRからMotoGPに参戦中のフランス人ライダーで、今年の母国フランスGPでは劇的な勝利を挙げました。フランス人ライダーによるフランスGP最高峰クラスの優勝は1954年以来の快挙で、Hondaにとっては2023年以来、2年ぶりの最高峰クラス勝利となりました。昨年は鈴鹿8耐に初参戦して優勝を飾っており、今季も勝利を狙います。レクオーナは2022年の鈴鹿8耐優勝時のメンバーです。優勝経験のある3人という充実したラインナップをそろえ、Honda HRCは4連覇を目指します。

「SDG Team HARC-PRO. Honda」は、名越哲平、國井勇輝、阿部恵斗の3人でエントリー。ハルク・プロは鈴鹿8耐優勝経験のある名門チームで、2023年には2位表彰台を獲得しています。名越は昨年、Hondaワークスチームのメンバーとして優勝に貢献。國井は昨年、JRRのST1000クラスとFIMアジアロードレース選手権(ARRC)のASB1000クラスでチャンピオンとなり、今季は戦いの舞台をMoto2に移しています。阿部はJRRのST600クラスで2連覇を達成し、その実力を認められてASB1000クラスに参戦中。3人ともトップ争いができる力を持っています。

過去にEWCのタイトルを2度獲得しているフル参戦チーム「F.C.C. TSR Honda France」は、ライダーを入れ替えて新体制でシーズンに挑んでいます。アラン・テシェが継続参戦し、コロンタン・ペロラーリと羽田太河が新たに加入しました。EWC第2戦のスパ8時間耐久レースで優勝し、現在は総合ランキング4位。鈴鹿はチームの地元でもあり、鈴鹿8耐では3回の優勝経験があります。地元での勝利を目指すのはもちろんのこと、EWCタイトル獲得に向けても重要な一戦となります。

「Honda Asia-Dream Racing with Astemo」は、昨年も鈴鹿8耐に参戦したナカリン・アティラットプワパット、アンディ・ファリド・イズディハールに、アズロイ・ハキーム・アヌアを加えてエントリー。ASB1000クラスを主戦場とするアティラットプワパットは、ARRC開幕戦の母国タイラウンドでダブルウインを達成。今季からST1000クラスにも参戦を開始し、第2戦スポーツランドSUGO(ST1000クラス開幕戦)で2位に入りました。Moto2への代役参戦も経験し活躍の場を広げるアティラットプワパットが、鈴鹿8耐でも上位進出を狙います。初参戦となるアヌアは、ARRC第2戦の母国マレーシアでレース1、レース2を制しました。イズディハールもARRCのトップライダーとして活躍しており、昨年はリタイアに終わった鈴鹿8耐でリベンジを期します。

鈴鹿8耐でポールポジション7回、優勝4回を誇る伊藤真一が監督を務める「Astemo Pro Honda SI Racing」は、野左根航汰、荒川晃大、山中琉聖のラインナップ。JSB1000クラスに参戦する野左根は、第2戦スポーツランドSUGO大会のレース1でトップとわずか0.004秒差の2位に入り、その実力を示しました。その野左根を中心に、ST1000クラス参戦の荒川、Moto3で活躍する山中という2人の若手を起用。山中は鈴鹿8耐初挑戦ながら、テストでポテンシャルを発揮してシートを獲得しました。速さに定評のある3人をそろえて、上位進出を狙います。

「Team ATJ with docomo business」は、JSB1000クラスに参戦するチームで、鈴鹿8耐ではレギュラーライダーの岩田悟、鈴木光来に加え、TOHO RacingからST1000クラスに参戦中の國峰啄磨がエントリー。昨年はイレギュラーなピットインがありながらも14位で完走しており、トップ10を狙うポテンシャルは十分にあります。

「Honda Dream RT 桜井ホンダ」は、伊藤和輝、日浦大治朗、ジョシュア・ブルックスの3人で鈴鹿8耐へ挑みます。JSB1000クラスに参戦している伊藤は、第2戦スポーツランドSUGOのレース2で4位に入るなど表彰台に迫る走りをみせています。日浦はモタードの名手として知られる一方、しばしばJRRにスポット参戦して上位に食い込む実力者。今年は第2戦スポーツランドSUGO大会に参戦し、JSB1000クラスで3位表彰台を獲得しています。ブルックスは英国スーパーバイク選手権(BSB)で活躍し、鈴鹿8耐の経験も豊富なライダーとして知られています。桜井ホンダは2003年の鈴鹿8耐で優勝した強豪で、昨年は6位に入賞。今年も上位進出を狙います。
2025年の鈴鹿8耐は、総勢55チームが参加予定(7月11日現在)。昨年より9チーム増加しており、さらなる混戦が予想されています。