Team HRC with 日本郵便が鈴鹿8耐3連覇を目指す
真夏の祭典「鈴鹿8時間耐久ロードレース」(鈴鹿8耐)の決勝が、7月21日(日)に開催されます。45回目を迎える鈴鹿8耐の歴史の中で、Hondaは、29回もの勝利を数えます。今年優勝することができれば、30回という記録となります。
Hondaの鈴鹿8耐勝利の歴史を振り返ると、1979年にCB900を駆るトニー・ハットン/マイク・コールがHonda勢として初優勝し、この年はトップ8をHonda勢が独占しました。81年には後にHondaを代表するライダーとなるワイン・ガードナーが初参戦し、85年にはRVF750を駆り優勝を飾ります。その後、ロードレース世界選手権に参戦するガードナー、マイケル・ドゥーハンの黄金コンビが勝利を挙げました。97年は伊藤真一/宇川徹がRVF/RC45を駆り、フルタイム開催の日本人ペアとして初優勝を達成し新たな扉を開きました。同ペアは98年も勝利し、連勝を果たしています。
2000年には導入されたVTR1000SPWを駆る宇川徹/加藤大治郎が勝利すると、翌01年にはバレンティーノ・ロッシ/コーリン・エドワーズ/鎌田学が優勝。02年にはVTR1000SPWを駆った加藤大治郎/コーリン・エドワーズが、通常7回行うピットストップを6回で済ませる前人未踏の作戦を遂行し、未だ破られていない219周の最多周回数記録を樹立し勝利しました。04年にはCBR1000RRWで宇川徹/井筒仁康が優勝し、Hondaは1997年~2006年まで10連勝の記録を残しています。
Hondaを代表するライダーである宇川徹は、鈴鹿8耐で5勝、ワイン・ガードナー、伊藤真一、清成龍一、マイケル・ファンデル・マークが4勝を挙げています。昨年、高橋巧が5勝目を挙げ、宇川と並び、歴代トップタイとなりました。今年はその記録を更新し、単独トップの6勝達成となるかも大きな注目を集めています。
高橋は「記録を意識して参戦したことはないが、なかなか巡ってこないチャンスだと思うので、記録を更新できたらとは思っています。なによりも勝ちたいという気持ちの方が上なので、勝てるように挑みます」と語る。
昨年は、ワークスチームのTeam HRC with 日本郵便(高橋巧、長島哲太、チャビ・ビエルゲ)が、CBR1000RR-R FIREBLADE SPを駆り、2連勝を飾りました。
2024年はTeam HRC with 日本郵便から、高橋巧、名越哲平、ヨハン・ザルコ、荒川晃大が参戦します。6月上旬に行われた1回目のテストには高橋、名越、荒川が参加しました。高橋はエースライダーとして、初めてワークスチームに参加する名越、荒川をリードしテスト項目を消化しました。
MotoGPカザフスタンGPの開催が延期されたことで、MotoGPライダーザルコが参戦できることになり、チームに加わることになりました。荒川はリザーブライダーとなり、参戦ライダーが正式決定しました。
ザルコは「ル・マン24時間耐久や鈴鹿8時間耐久など、いつか耐久レースを走りたいと思っていました。しかし、MotoGPを戦っているうちはスケジュール的に難しいから、走れるのはMotoGPへの参戦を終えてからだと考えていました。だけど、スケジュールが変更になって、時間ができたことで参戦できるようになった」と言います。
フランス人のザルコにとって、ル・マンやボルドールといった24時間耐久はとても身近なレース。鈴鹿8耐は「トップライダーのバレンティーノ・ロッシやケーシー・ストーナーが参戦したことで、興味が沸いた」と語ります。
ザルコは2回目のテストから合流し、初めての鈴鹿サーキットを高橋や名越に先導され、ロングランを消化しました。HRCスタッフにはMotoGP経験者も多く、ザルコと顔見知りのメカニックもいることが、大きな安心材料となっています。「スタッフとのコミュニケーションも問題ないし、鈴鹿8耐の経験が豊富な高橋から学ぶことができた」と語ります。
高橋は「ザルコ選手とは初対面でした。ちょっとアグレッシブなイメージがあり、うまくいくのかと思った部分もありましたが、親しみやすい人でした。特に、鈴鹿に着いた日に彼がコースを歩いている姿を見て、真摯に取り組んでくれるのだなと思えたことが一番です。自分は1回目のテストで走り込めたこともあり、2回目は、なによりもザルコ選手にコースとマシンに慣れてもらいたいと思い、自分はあまり走らずにザルコ選手の走行時間としてもらいました。名越選手もロングランをしっかりこなしてくれて、いいテストができたと思います」と語りました。
名越は「あこがれのワークスチームで走る初めての8耐です。参戦が決まってからずっと緊張していますが、しっかりと役目を果たすことができるように努めたいです。最後は、名越でよかったと思ってもらえようにしたい」と決意を述べています。
ザルコは「MotoGP参戦をこなして、勝つために鈴鹿に戻ってくる」と語りました。Hondaにとって30回目の勝利に向け、今年はゼッケン30番で参戦します。
鈴鹿8耐は全4戦で争われるFIM世界耐久選手権(EWC)の1戦で、第3戦として開催されます。開幕戦のル・マン24時間レース、第2戦のスパ8時間耐久レースをこなし、この鈴鹿8耐を終えると最終戦のボルドール24時間を残すのみとなります。F.C.C. TSR Honda Franceは、2度のEWCタイトルを獲得したトップチームで、今季もジョシュ・フック、マイク・ディ・メリオ、アラン・テシェと昨年同様のラインナップで挑んでいます。
開幕戦は路面温度の低さから転倒が相次ぐ荒れた展開となり、アクシデントを乗り越え10番手までばん回しますが、残り1時間15分でトラブルが発生しリタイア。第2戦はトップ争いを展開中にクラッシュして順位を下げますが、そこから見事に追い上げて5位となりました。現在、総合ランキング10位です。2023年の鈴鹿8耐では3位と上位に食い込み、EWC参戦チームの中ではトップで終えています。藤井正和総監督は「鈴鹿で流れを変え、最終戦へと望みをつなぐ戦いにしたい」と誓っています。
SDG Team HARC-PRO. Hondaは、全日本ロードレース選手権(JRR)JSB1000クラスの名越哲平がHRCから参戦となり、JRR ST1000クラスとアジアロードレース選手権(ARRC)ASB1000クラスへダブルエントリーしている國井勇輝、スペインスーパーバイク選手権(ESBK)の浦本修充、さらにMoto2ライダーのマリオ・アジというラインナップで挑みます。
國井はJRRでは2連勝、ARRCでも第3戦日本ラウンドのレース2で独走優勝を飾りました。昨年はケガのため鈴鹿8耐は参戦できませんでしたが、今年はチームのエースライダーとして参戦します。
浦本は2018年からESBK参戦を始め、昨年はランキング4位とトップライダーとして認知され、現在はトップ争いの常連です。昨年は同チームから参戦し2位を獲得。チームの大きな戦力となりました。
Moto2ライダーのアジは、鈴鹿8耐初参戦となります。鈴鹿8耐で3勝の記録を持ち、ライダー育成に定評のある本田重樹監督が、どんな采配をみせるのか注目です。
ARRCのHonda Asia-Dream Racing with Astemoからは、モハメド・ザクワン・ビン・ザイディ、アンディ・ファリド・イズディハール、ナカリン・アティラプワパが参戦します。昨年も、このメンバーで参戦しましたが、今季はARRCのSS600クラスに参戦していたナカリンが、ASB1000へステップアップしたことによって、ASB1000ライダー3人で挑むかたちとなります。
ARRCは第3戦を終え、アンディがランキング3位、ナカリンが4位、ザクワンが6位につけています。玉田誠監督は「鈴鹿8耐はライダー、メカニックとチームにとってスキルアップの場でしたが、今年は結果を求めていきたい。表彰台を狙う力が備わっていると思う」と上位進出を目指します。
鈴鹿8耐で4勝を挙げ、7度のポールポジションを獲得したレジェンドライダー・伊藤真一が率いるAstemo Honda Dream SI Racingは、JRR JSB1000クラスに参戦する野左根航汰、Moto2欧州選手権の羽田太河、JRR ST1000クラスの作本輝介のラインナップで挑みます。Honda Dream RT 桜井ホンダは、JRR JSB1000クラスの伊藤和輝と鈴鹿スペシャリストである日浦大治朗の2人体制で挑みます。TOHO Racingは、清成 龍一、カワサキワークスやヨシムラで鈴鹿8耐表彰台経験のある渡辺一樹、昨年引退を発表した榎戸育寛が合流しました。チームは昨年(清成、國峰啄磨、榎戸)、2位でゴールするもタンク容量の誤差でペナルティーを科せられ、故意におかしたことではないことを証明することが難しく失格となりました。今年こそ、正真正銘のトップに迫る力を示そうとしています。Team ATJ with docomo businessからはJRR JSB1000クラスから岩田悟、ST600クラスから鈴木光来と岡谷雄太が参戦します。事前テストでは、上位に迫るタイムを記録しており、躍進に期待が集まります。
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